
東京海上日動は、防災・減災(レジリエンス)、サイバー、ヘルスケアなど、社会課題の解決をきっかけに価値提供領域の拡大を図る
東京海上日動が、これまでの保険商品にとどまらない新たなソリューション事業を強化している。
同社の強みといえば、損保ビジネスにおける顧客接点の多様さと豊富さにある。保険の更新時には保険以外の課題など、さまざまな話を顧客から聞くリアルな機会は多々あった。これまでは、損害保険業における業務範囲規制の観点から保険商品以外のソリューションを自社で提供することは困難であったものの、保険業法改正による規制緩和があり、保険会社でも提供できるソリューションの幅が広がった。これをきっかけに2024年から始まった今中期経営計画でも、ソリューション事業の拡大を重点戦略と位置づけ、今後幅広い領域で社会課題の解決に取り組んでいくことになった。
その取り組みの一つとなるのが2024年度からスタートしたビジネスマッチングプラットフォーム「ビジクル by
東京海上日動」を用いた提案活動だ。本活動は顧客が抱える課題のうち、保険商品では解決できない領域について、全国に広がる保険代理店や社員を通じて、同社のグループ会社や提携企業のソリューションを顧客に紹介するというもの。東京海上日動 営業企画部の小野 かれんさんが次のように説明する。
「お客様の課題は防災・減災、人事労務、ヘルスケア、サイバー、その他経営に関わるものまで本当に多様です。こうした幅広い課題に対応するソリューションを提供していくことで、お客様の“いざ”だけでなく、“いつも”も守っていきたいと思っています。プラットフォームによって社員や保険代理店による保険外のソリューションの提案活動をあと押しし、お客様が直面する社会課題に対して、保険の枠を超えた新たな価値提供を実現することで、ソリューション事業を保険本業に次ぐ新たな収益の柱に育てていきたいと考えています」

東京海上グループの総合力で幅広い領域のソリューションを用意
「ビジクル by
東京海上日動」は同社と三菱UFJ銀行の連結子会社であるBusinessTechが共同開発したITツールで、これを活用することで、ビジネスマッチングを本格展開していく。
提供する具体的なソリューションでは、例えば、防災・減災では自然災害リスクの定量的な評価コンサルティング、ヘルスケアでは従業員向けの仕事と介護の両立セミナー、モビリティでは運行管理支援AIロボットサービスなど、グループ各社が提供するソリューションを中心に多様なラインナップを提供している。

「ほかにも東京海上グループ外の提携企業が持っている幅広い分野のソリューションが集約されており、保険代理店は顧客のニーズや課題に合わせたソリューションを紹介することができます。当社はプラットフォームを通じて、お客様にソリューション提供企業を紹介し、そこで蓄積されたデータを活用することで、より最適な保険商品や新たなソリューションの提案にもつなげていきたいと考えています」(小野さん)
事業者が抱える移動や輸送・物流などの課題に対して
最適なソリューションを提供する
このように東京海上日動だけでなく、東京海上グループとして、総力をあげてソリューション事業に注力している。そして、新たに東京海上グループの一つとして2023年11月に設立されたのが、東京海上スマートモビリティだ。その名の通り、事業者向けにモビリティソリューションを提供する会社で、事業者が抱える移動や輸送・物流などに関するリスクやコストの削減、労務環境の改善、または、環境問題や自動運転などへの対応力強化に向けたモビリティソリューションを提供していく。東京海上ホールディングスの進
知恵子さんがこう説明する。
「現在、モビリティに関する課題は、事故防止や安全運転にとどまらず、物流の2024年問題に象徴されるようにドライバー数の減少に伴う輸送力の低下、車両管理、ドライバーの労務・健康管理、あるいは、脱炭素や自動運転への対応など複雑化しています。
東京海上グループは、これまで100年以上にわたり、自動車保険をはじめとするさまざまな保険商品を提供してきました。近年では、ドライブレコーダー付き自動車保険の開発や、AIによる潜在危険度予測モデルを活用した交通事故削減支援サービスなど、テクノロジーを活用したソリューションに取り組んでいます。こうしたソリューションを一層強化していくことで、お客様のニーズや社会課題に応えていきたいと考えています」
モビリティに関する社会課題として、例えば運送事業においては、荷主、多岐にわたる貨物と配送方法、消費者ニーズなどが複雑に絡み合っているなど、個々の企業単位で抜本的な解決が難しいという問題がある。抜本的な解決に向けては、個々の企業単位ではなく、モビリティに関係するさまざまなプレーヤーと業界横断で連携しながら最適なソリューションを開発していくことが不可欠となっている。
最新テクノロジーの活用と
異業種パートナーとの連携も
こうしたなか、東京海上スマートモビリティが提供しているサービスの一つが、フリートマネジメントサービス「MIMAMO
DRIVE(ミマモドライブ)」だ。これは第一弾の取り組みとして、2024年4月より東京海上日動と連携し、東京海上グループの事故削減・事故データ解析ノウハウを生かして企業の車両管理や安全運転などを支援するサービスだ。進さんが言う。
「MIMAMO
DRIVEは、企業が使用する車両にIoTデバイスを搭載し、そこから収集したデータを活用してリアルタイムでの動態管理や、ドライバーの運転性向に応じた安全運転診断などができるサービスです。デバイスから取得するデータで自動に日報も作成されるため、ドライバーの業務負担を軽減できるようになります。MIMAMO
DRIVEでは車両管理に係る事業者のリスクやコストの低減を実現していきたいと考えています」

モビリティに関する社会課題は個々の企業単位ではなく、業界横断的に取り組まなければ解決は難しい。だからこそ、同社ではさまざまなプレーヤーを巻き込んで、全体の最適化を図る動きをサポートしていく方針だ。
「東京海上日動が保有する多様なデータ・ノウハウや顧客接点を生かし、最新のモビリティテクノロジーの活用と異業種パートナーとの連携を進めていきたいと考えています。現在はドライバーの労務・健康管理サービスなどの展開を検討しており、今後も顧客が持つ課題を的確かつ迅速に把握し、新たなソリューションを開発し提供していきたいと考えています」
(進さん)
INTERVIEWEE

小野 かれん KAREN ONO
東京海上日動
営業企画部

進 知恵子 CHIEKO SUSUMU
東京海上ホールディングス
ビジネスデザイン部
東京海上日動火災保険株式会社
東京都千代田区大手町2-6-4
1879年創業。お客様の信頼を事業活動の原点におき、「お客様や地域社会の“いつも”を支え、“いざ”をお守りする」というパーパスに基づく発意・挑戦を推進。代理店とともに「安心と安全」の提供を通じて、豊かで快適な社会生活と経済の発展に貢献する。