
三菱プレシジョンが2023年5月から『次世代クラウド型チケットレス駐車場』を展開中。チケットレス、キャッシュレスで駐車場システムは新たな次元へ。
三菱プレシジョンが2023年5月から次世代クラウド型チケットレス駐車場のサービスをスタートさせている。この新たなパーキングシステムは、精算機、入退場ゲート、車番(ナンバー)認識装置などを駐車場運営管理(料金精算・管理)用のクラウドサービスである「DIANET®(ダイヤネット)」に集約させたもので、新たな取り組みとなる。
その特徴としては、まず入場時に車番認識カメラにてナンバーを認識し、チケット発券はなく、ナンバー情報で管理する。出庫の際は、事前精算機の場合は、ナンバー情報や入庫時刻を入力し精算。支払いは、各種キャッシュレス決済が可能(店舗割引処理は、QRコード印字レシートで対応可能)で、事前精算していない場合は、出口ゲートでも精算できる。これまでの駐車場利用の手間を大幅に省き、チケットレス、キャッシュレスで利用者の使い勝手を向上させるものになる。

実際の施設では、利用者が事前精算機で精算するときは車番か、入庫時刻を入力するため、駐車場内にはナンバープレートの4桁を覚えておいてもらうよう大型案内看板を掲示しているほか、入口カーゲートの上に、入場した時間を認識してもらうため、大型デジタル時計も設置している。また、入口には発券機がなく省スペースとなり、車番認識カメラはポール固定で設置の自由度が高くできている。出口で精算する場合も、設置された車番認識カメラで即座にナンバーを認識し、精算することができる。

案内表示板

車番認識カメラと大型デジタル時計
クラウド化によって利便性が向上
こうしたチケットレス、キャッシュレスのサービスの提供を可能にしているのが、駐車場運営管理用のクラウドサービスである「DIANET®」だ。三菱プレシジョン駐車場システム技術部技術課長である西田 博行氏が次のように語る。
「これまで駐車場のシステムは、基本的に入口に発券機、出口に精算機があり、施設によっては事前精算機、コイン駐車場ではフラップ板があり、個々の機器同士はネットワークで接続されているものの、あくまでも駐車場内での連接機能にとどまっていました。一方、新たなシステムでは入出庫、精算などの情報をクラウド上に集約することで、事業者は売上管理業務の効率化や定期契約管理の簡便化ほか、駐車場内の状況をいつでもどこからでも確認できるようになっています。また、利用者はスマホからの事前精算サービスや駐車場予約なども可能なシステムとなっています。さらに、運営サポートとしてコールセンターからの遠隔管理も提供しており、機器警報を元に警備会社を派遣したり、ゲートバーの開閉を遠隔操作したりすることもできるようになっています」
この「DIANET®」の開発に要した期間は2年ほど。開発に苦労したところはどこか。
「私達が提供する駐車場システムにクラウドを活用するのは今回が初めてのことであり、もしサービスが停止したり、機能が欠損したりした場合に備えて、サービスやデータを冗長化するようクラウドを構成することが大きな技術的テーマとなりました。また、地上の機器からデータを取得する際の通信プロトコルほか、新たなシステムでは精算機のすべての機能をクラウドに上げているため、将来的に地上に機器がない状態でも駐車場オペレーションができるようにすることに苦労しました」(西田氏)

駐車場業界も少子高齢化の影響を受ける
現在、この次世代クラウド型チケットレス駐車場は、商業施設のポンテポルタ千住(東京都足立区)や駅前駐車場であるパーククラブ七間町(静岡県静岡市)などで導入されている。
「駐車券を紛失したといったトラブルもなくなり、駐車場自体も使いやすくなったというお声をいただいています。どんな駐車場であれ、導入が可能となっています」(西田氏)
こうした駐車場システムのクラウド化が進むのは、チケットレスやキャッシュレスによる利便性向上だけが理由ではない。同社駐車場システム営業部の阪本 翔平氏がこう指摘する。
「駐車場業界も少子高齢化の影響で、係員などが人手不足の状況にあります。駐車場の運営には駐車場の掃除や放置車の措置ほか、駐車券を補充したり、集金に行ったり意外にも多くの手間がかかっており、少しでも手間を省きたいというニーズがあるのです」
これまで業界の技術開発は基本的に駐車券と現金の扱いに注力していたが、コロナ禍の影響もあり、ここ数年はチケットレス、キャッシュレス化の動きが加速。それに加え、駐車場係員の人手不足も顕在化した。そうしたなかで、同社は車番管理システムや各種キャッシュレス決済システムなどの技術で業界の先頭を走ってきた。
「私達は大規模駐車場を得意としており、羽田空港の駐車場でも私達のシステムが採用されています。また、駐車場の料金システムは複雑なのですが、POSシステムと連動させるなどいち早くカスタマイズにも取り組んできました。こうした知見とノウハウの積み重ねによって、さらなる技術開発に力を入れていきたいと考えています」(西田氏)

ポンテポルタ千住駐車場


パーククラブ七間町駐車場(スマホ事前精算対応)

同社はシミュレーションシステム、航法センサなどの航空・宇宙機器、そしてパーキングシステムの3つを事業の柱としている。パーキングシステム事業は、シミュレーション事業の技術を交通量計数のための車両検知器など交通管制システムへ応用し、さらに駐車場の台数管理や精算機などの駐車場機器に発展させた歴史を持つ。今後同社の駐車場ビジネスはどう進展していくのだろうか。経営企画室長の栖原
正毅氏が言う。
「将来、自動車の自動運転技術が進んでいけば、駐車場はどうなっていくのか。これからは、シミュレーション技術とパーキングシステムの技術を融合できる範囲も増えていくと考えています。例えば、自動運転で駐車をしてくれる駐車場なども、その1つです。こうした技術を使って、モノからサービスへビジネスを進展させていきたい。そうして誰もが想像しえないような未来の駐車場を作っていきたいと考えています」。
INTERVIEWEE

栖原 正毅 MASAKI SUHARA
取締役 経営企画室長

西田 博行 HIROYUKI NISHIDA
鎌倉事業所 駐車場システム統括部
駐車場システム技術部 技術課長

阪本 翔平 SHOHEI SAKAMOTO
営業本部 社会・交通システム事業部
駐車場システム営業部 駐車場システム第一グループ
三菱プレシジョン株式会社
東京都港区港南1-6-41 芝浦クリスタル品川8階
フライトシミュレータと航法装置の設計・製造会社として1962年に発足。現在では、シミュレーションシステム、航空・宇宙機器、パーキングシステムの3事業を中心に、安全・安心・快適な未来社会実現のため、社会インフラのアップデートに貢献している。