
新造客船「飛鳥Ⅲ」
新造客船「飛鳥Ⅲ(アスカスリー)」の登場によって、「飛鳥Ⅱ」との2隻での運航が始まる。初代「飛鳥」から引き継ぎ、約20年にわたり歴史を積み重ねてきた「飛鳥Ⅱ」は2025年に最後の世界一周クルーズを迎え、以後もグランドクルーズは引き続き行っていく。世界一周クルーズは「飛鳥Ⅲ」に引き継がれる。
郵船クルーズは、新造客船「飛鳥Ⅲ」(船籍港は横浜)を2025年から就航させる。同船は5万2,200総トンと客船としては国内最大級。現在、同社が運航している「飛鳥Ⅱ」(2006年就航/船籍港 横浜/5万0,444総トン)と合わせて乗客定員は約1,600名となり、日本船籍のクルーズ客船としては最大規模となる。

飛鳥Ⅱと飛鳥Ⅲの概要主要項目比較 ※2024年12時点
「飛鳥Ⅲ」は、これまで飛鳥クルーズが培ってきた日本船ならではのおもてなしと上質なサービスを引き続き提供し新たなクルーズ文化の発展を目指す。同船はこれまでの「飛鳥Ⅱ」と比べ、具体的にどのような特徴があるのだろうか。同社広報・ブランド戦略チームは次のように説明する。
「両船の大きさはほぼ同じですが、『飛鳥Ⅲ』は乗客定員を少なくして、一人当たりの面積を広くとっており、全室バルコニー付きでプライベートな眺望をお楽しみいただけます。『飛鳥Ⅲ』ではワンナイトクルーズは行わず、お部屋や船内でゆっくりと上質な時間を過ごしていただくことを目的としております」
また、利用者の高いニーズを受け、「飛鳥Ⅲ」ではシングルルームも用意している。
「近年、お一人で船旅される方が増えているため、ご用意することになりました」
両船の違いをひと言でいえば、「飛鳥Ⅱ」は“オーセンティック”、「飛鳥Ⅲ」は“オーセンティック+パーソナライズサービス”と同社広報・ブランド戦略チームは表現する。

「飛鳥Ⅲ」の最上級客室「ロイヤルスイート」のリビングルーム
「『飛鳥Ⅲ』では、より個々のお客さまの好みに合わせたサービスをご提供できるようになっています。たとえば、好きな時間にお食事ができるようになっており、趣の異なる6つのレストランをご用意しております。また、全客室にタブレットを導入したことにより、さまざまな状況で、より好みに合ったサービスをご提供することが可能となっています」
「飛鳥Ⅲ」は船としても能力をバージョンアップさせている。燃料は天然ガスと重油などを併用したエコシップ。イカリを下ろさなくとも船の位置を保持できるダイナミック・ポジショニング・システムを採用している。より小回りが利くため、これまで入れなかった港にも寄港することができる。さらに日本のクルーズ船では初めて陸上電力供給システムを採用。どちらも環境対策を考慮したものとなっている。
船旅は少なくとも3泊以上
そうすれば、船旅の楽しみ方が分かる

「飛鳥Ⅲ」の「アルバトロスプール」。「アルバトロス」が描かれた飛鳥クルーズのロゴマークを中心に、天然の観葉植物が植栽されたグリーンウォールが癒やしの空間を演出する。グリーンウォールの前ではイベントも開催される。
ここで知っておくべきことは、「飛鳥Ⅲ」は「飛鳥Ⅱ」の後継船ではないということ。「飛鳥Ⅱ」が引退するわけではない。今後同社のクルーズ客船は2隻での運航となり、ラインナップが増えることになる。
「『飛鳥Ⅱ』は60代以上のお客さまが多いのに対し、『飛鳥Ⅲ』は40代~60代以上のお客さまへと、よりターゲットの世代を拡げたかたちとなっております。ゆったりと長い旅を楽しみたい方に、より幅広く利用していただきたいと考えています」
一般的にクルーズ客船の利用は、40代以上にとってはハードルが高いイメージがある。とくに40代は子育てに追われる世代でもある。しかし、実はクルーズ客船はそうした世代こそが楽しめるものになっている。同社広報・ブランド戦略チームはこう説明する。

「飛鳥Ⅲ」の船首(船の一番前)に位置するグランドスパ。刻々と表情を変える大海原の風景。露天風呂はクルーズの贅沢時間。

「飛鳥Ⅲ」には6つのダイニングがある。迷ったらおすすめしたいのが、世界中のお料理が集まるスタイリッシュなガーデン・ダイニング「エムスガーデン」。
「『飛鳥Ⅱ』では夏休みには親・子・孫の3世代やファミリーでのご利用が増える時期です。実は、子育て世代にとってもクルーズは快適なのです。ファミリー向けのクルーズを選べば、ベビーシッターも乗船していて、子ども達を船内で自由に遊ばせることもできます。プールや大浴場、船内や各寄港地で多くのイベントもあり、子ども達を飽きさせません。食事は朝食から夜食まで提供されており、アルコールや一部メニューを除いて食べ放題、飲み放題です。夏の花火にしても『飛鳥Ⅱ』はビル12階分の高さがあるので眺望を遮るもののない環境で花火を楽しむことができます。クルーズはイベントも移動も食事も宿泊もすべて一体となっています。ホテル代や食事代、交通費などの予算を合わせて考慮すると、実際にはそれほどハードルは高くないのです」
実際、リピーターの利用者も多く、若い世代でもゲストエンターテイナーコンサート目当てや、夏休み、GWといった長期休暇をきっかけに利用し始めるケースが少なくないという。
「船旅は1泊では充分に楽しめません。船内は広く、やっと船旅に慣れた頃に下船することになります。それがきっかけとして、皆さん連泊してみたくなるのです。船旅はできれば3泊以上がおすすめです。そうすれば、船旅の楽しみ方がより広がっていくと思います」
価格は1人1泊8万円前後から。現在、同社のクルーズは満船状態が続いているという。
「飛鳥Ⅱ」は2025年最後の世界一周クルーズを迎える
今後、世界一周クルーズは「飛鳥Ⅲ」へ

「飛鳥Ⅱ」
今回の「飛鳥Ⅲ」の登場によって、初代「飛鳥」から引き継ぎ、約20年にわたって歴史を積み重ねてきた「飛鳥Ⅱ」は、2025年に最後の世界一周クルーズを迎える。今後、世界一周クルーズは「飛鳥Ⅲ」に引き継がれ、「飛鳥Ⅱ」は引き続き日本近海のクルーズや1カ月程度海外を巡るグランドクルーズを担当することになる。
「飛鳥Ⅱ」の世界一周クルーズの最終スケジュールは、横浜発着が2025年3月31日(月)~7月11日(金)の103日間、神戸発着が2025年4月1日(火)~7月12日(土)の103日間で行われる。シンガポール、南アフリカ、ナミビア、スペイン、イギリス、フランス、アメリカ、メキシコなど各国に寄港する。

「飛鳥Ⅱ」最後の世界一周クルーズ
「各国の入国審査については船側が代行し、日本語でサポート。通常の海外旅行での煩わしさは一切ありません。荷物も広げたままで世界一周ができます。『飛鳥Ⅱ』には大浴場と露天風呂があるため、世界の海を眺めながら入浴していただけます。なかには、客室のバスタブは使わず、各寄港地で購入したおみやげなどの荷物置き場にしているお客さまもいらっしゃいます。もちろん寄港地ではその街で遊んで過ごすこともできます。また、今回の最後の世界一周クルーズではお好きな区間を選んで乗船することもできるので、現役世代の方も乗船しやすいと思います」
通常代金は2名1室利用でお1人800万円から。最上級客室のロイヤルスイートは同4,020万円となる。割引制度があるほか、飛鳥クルーズの会員組織「My ASUKA
CLUB」(入会金・年会費無料)は乗船しなくても登録できるうえ、会員特典も充実している。
「皆さん、世界一周クルーズは年間を通して行われていると思われがちですが、毎年1回4月~7月にのみに行われます。それは世界的に季節が快適な時期だからです。とくにヨーロッパは5月~6月がベストシーズン。ほかにも各国でその季節ならではの景色を楽しめます」
いつか叶えたい夢として憧れリストに「飛鳥Ⅲ」で「世界一周クルーズ」を入れておいてもいいのではないだろうか。

My ASUKA CLUB|飛鳥クルーズの最新情報やご優待割引券、船上クーポンのご利用など会員限定のお得な情報をお届けします。入会金・年会費無料。ご乗船の有無にかかわらず、2歳以上の方ならどなたでもご入会いただけます。
郵船クルーズ株式会社
横浜市西区みなとみらい2-2-1
gat
1989年クリスタル クルーズ ジャパンとして設立。1990年郵船クルーズへ社名変更。2000年日本郵船より「飛鳥」を買い取り、2006年CRYSTAL CRUISES
INC.運航の「クリスタル・ハーモニー」を購入し、「飛鳥Ⅱ」に改装。同年「飛鳥」を売船し、「飛鳥Ⅱ」就航。
2021年「飛鳥Ⅲ」建造発表。2025年夏「飛鳥Ⅲ」就航。クルーズ客船の保有、運航、クルーズ商品の企画開発、集客などを手掛ける。従業員は陸上社員130名、海上社員20名。