三菱重工グループの三菱重工サーマルシステムズは、低GWP※のR32冷媒採用のビル用マルチエアコン「LXZシリーズ」を発売する。国はビル用マルチエアコン(新設用・冷暖切替タイプ)のGWPを750以下とすることを義務付けており、R32冷媒を採用したLXZシリーズはGWPを従来機の約3分の1に低減することができる。
※GWP:Global Warming Potential(地球温暖化係数):CO₂の何倍の温室効果を有するかを表す値です。

LXZシリーズ
三菱重工グループの三菱重工サーマルシステムズは、R32冷媒を採用した国内向けビル用マルチエアコン「LXZシリーズ」を2025年3月から順次発売する。GWP(地球温暖化係数)が低いR32冷媒を採用することで環境負荷低減を実現。新型コンプレッサの搭載や新風路設計、新制御機能の採用によって快適性の向上と省エネ化を図っている。また室外ユニットの前面パネルをフラットにし、青色のオーナメントを加えることでデザイン性を向上させるとともに連続設置時の一体感を高めている。
同社のマーケティング室で業務用製品の商品計画、営業サポートを担当している図子田 譲氏はこう説明する。
「今回は、シリーズとして約20年ぶりにデザインおよび冷媒を変更する大幅なモデルチェンジとなります。ユニット展開としては、小ユニット、大ユニットの2タイプから中ユニットを加えた3タイプとし、高さを統一しています。デザインについてはフルモデルチェンジしており、前面パネルをフラットにして青色のオーナメントを採用することで、ブランド感、集合設置時の統一感、美観を向上させています。室外機でありながら、私達は製品の細部までこだわって開発していることをアピールし
、環境対策とあわせて差別化を図っていきたいと考えています。」

室外ユニット
三菱重工グループのカーボンニュートラルの実現に貢献
2025年4月からビル用マルチエアコン(新設用・冷暖切替タイプ)は低GWP冷媒の使用が義務化へ
「LXZシリーズ」は、ビル用マルチエアコン「LXシリーズ」のなかでも究極の製品であるという意味を込めて「Z」と記されている。地球温暖化係数が従来機のR410A冷媒(GWP 2,090)に比べ、約3分の1であるR32冷媒(GWP 675) を採用し、環境負荷低減を大きく向上させたことは大きな特長である。
「国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラルの実現を目指しており、フロン排出抑制法ではビル用マルチエアコン(新設用・冷暖切替タイプ)については、2025年4月からGWP値750以下とする指定製品化の対象となっています。 そのため、今後低GWP冷媒ではない製品は販売を制限されます。LXZシリーズは、そこに向けてモデルチェンジした新製品となります。ご存知のとおり三菱重工グループは国に先駆けて、2040年のカーボンニュートラル実現を目標に掲げており、低GWP冷媒を使った高性能製品の開発を通じて、環境負荷低減に貢献していくとともに、多種多様な市場やお客さまのニーズに応じた最適なサーマルソリューションの実現に貢献できると考えています」
省エネ性と快適性を両立した新機能を搭載
「LXZシリーズ」の新機能として、Variable Temperature Capacity Control
+(VTCC+)という新制御機能により、一段と省エネ性と快適性を両立させている。室内機の負荷に応じて冷媒の目標圧力を自動調整することで圧縮機の回転数を制御、適切な温度調整で省エネ運転を実現している。また3つのモードで用途に応じた設定が可能となっている。次に、従来機では室外機のデフロスト(霜取り)運転ごとに室内温度が下がってしまい、肌寒く不快に感じるケースがあったが、ホットガスバイパス方式のデフロスト運転制御を採用。室内側に流れる高温のガスを室外機に流すことで、長時間の連続暖房運転が可能なノンストップ暖房を可能とした。※
※設置条件、使用環境等により霜取り運転に入る場合があります。


ホットガスバイパス回路によるノンストップ暖房
さらに「LXZシリーズ」では熱交換器の細径化と高密度化により小ユニットの設置面積を大幅削減。運転効率の向上と室外機のコンパクト化を実現し、単体ユニットを組み合わせ、最大54馬力まで対応が可能となっている。
「高性能を追求するとともに、できる限り全体をコンパクト化しました。設置場所の条件が厳しい場合でも、柔軟に対応できるよう設計しています」
また、R32冷媒に最適化した新型コンプレッサを搭載するとともに、送風ファン などの構造を見直した新送風路設計を採用。これによって、さらなる省エネ性向上も図っている。

省エネ性向上のための新型コンプレッサと深層風路設計
「当社でR32冷媒をビル用マルチエアコンに採用し、システム化するのは初めての取り組みとなります。今回は外観デザインのフルモデルチェンジを含め、一からの開発でした。しかも省エネを実現させるため、省エネの指標であるAPF(Annual Performance Factor)の基準値以上を達成しなければならず、新たなモデル、新たな冷媒を使って、省エネ性を向上させるために開発陣が苦労して作り上げた製品となっています」
新設用・冷暖切替タイプのLXZシリーズの投入を皮切りに
ほかのラインアップにも展開
同社の「LXZシリーズ」は、すでに欧州で「KXZシリーズ」として小ユニットを2024年3月から先行して発売している。今後ほかのラインアップにも順次展開していく予定だ。
日本では新設・冷暖切替タイプ「LXZシリーズ」の投入を皮切りに、更新専用タイプ(既設冷媒配管を流用し室内機と室外機のみを交換)、冷暖房同時運転タイプ(ひとつの室外機で可能)にも順次R32冷媒や新制御機能を展開させていく予定だ。図子田氏もこう述べる。
「国は今後さらにGWPを下げる施策を検討しています。私達もさらなる低GWP化を目指して、引き続き技術開発を進めていきたいと考えています」。
INTERVIEWEE

図子田 譲 YUZURU ZUSHIDA
マーケティング室 空調マーケティンググループ
三菱重工サーマルシステムズ株式会社
東京都千代田区丸の内3-2-3
三菱重工業から冷熱事業を承継し分離・独立した三菱重工100%出資の会社で、三菱重工グループ(国内外)の冷熱分野を統括している。2016年、冷熱技術をコアとした専業メーカーとしてスタート。事業領域は、各種プラントのエネルギー効率の向上を図るサーマルエンジニアリング事業、高層オフィスビルやショッピングモール、工場などの大空間空調を実現する大型冷凍機事業ほか、空調事業、輸送冷凍機事業、カーエアコン事業等を展開する。