『アウトランダー』プラグインハイブリッドEVモデル(以下『アウトランダーPHEV』)は、三菱自動車のフラッグシップモデル。2013年1月、世界初SUVタイプのプラグインハイブリッドEVとして登場して以来、SUVタイプ4WDのPHEVとして世界ナンバーワンの販売台数を誇る。今回の大幅改良の中身とは?
三菱自動車はクロスオーバーSUV『アウトランダーPHEV』を大幅改良し、昨年10月31日から国内販売をスタートさせた。海外では2025年春から欧州で販売をスタートし、その後、豪州やニュージーランド、北米などへ順次展開していく方針だ。
今回の大幅改良ではPHEV性能をさらに強化し、EV航続距離を100km超にするなど動力性能や快適性を向上させるとともに、内外装の質感向上と機能の充実化を図っている。
『アウトランダーPHEV』は、三菱自動車のフラッグシップモデルだ。2013年1月、世界初のSUVタイプのプラグインハイブリッド(PH)EVとして登場した。床下に搭載した大容量駆動用バッテリーに蓄えた電力で“EV”として走ると同時に、バッテリー残量や走行状況など必要に応じてハイブリッド走行へ切り替えることでクリーンさと力強い走りを実現。まさに同社の電動化技術と四輪制御技術の粋を集め、2013年からSUVタイプ4WDのPHEVとして世界ナンバーワンの累計販売台数を誇ってきた。2021年からは「威風堂堂」をコンセプトにさらなるパワーアップを遂げた。
同社商品戦略本部CPSチーム(Global Vehicle)商品企画チーフ・プロダクト・スペシャリストの五味 淳史氏は次のように語る。
「威風堂堂は私がマネジャー時代につくったコンセプトです。それが今回、威風堂堂第二章として世に出ることは非常に感慨深い。アウトランダーPHEVの特長は力強い外観、上質な内装、力強く滑らかな走りを楽しめることなどが挙げられますが、今回大幅改良した新型アウトランダーPHEVは、デザインや走行性能への高い評価に加え、乗り心地や上質感を徹底してレベルアップした歴代最高のアウトランダーPHEVになったと考えています」
駆動用バッテリーを刷新し、
EV航続距離を約20km伸長して100km超に
『アウトランダーPHEV』は2021年12月にフルモデルチェンジし、外観デザイン、PHEVシステムを含めた動力性能、ツインモーター4WDと四輪制御技術「S-AWC」からなる高い操縦安定性、3列7人乗りシートの採用による使い勝手のよさが評価されてきた。
今回の大幅改良では、こうした部分はキープコンセプトとしながら、「洗練」と「上質」を重点項目として、正常進化させているのが大きな特徴となっている。その特徴とは何か。具体的に見ていくことにしよう。
一つめは、駆動用バッテリーを刷新し、EV航続距離を約20km伸長して100km超にしたこと。今回の大幅改良では、搭載されるリチウムイオンバッテリーを刷新し、バッテリー容量を約10%増やすとともに、PHEVシステムの最高出力を約20%向上させた。
「それにより、EVならではのスムーズで力強い加速が持続し、高速道路での合流や追い越し時のストレスを軽減するとともに、エンジン始動頻度が低減。より静かで気持ちのよいEVらしいドライブが楽しめるようになっています」(五味氏)。
また、アクセル操作時のモータートルク特性をマイルドにすることで、車両の挙動が安定し、快適性が増した。それ以外にも空力性能を向上させたほか、走行抵抗の低減やPHEVシステムなどの効率化により、燃費もよくなった。さらに、駆動用バッテリーの容量拡大にあわせて充電速度にも改良を加え、普通充電(AC200V/15A)での満充電までの充電時間は前モデルと同じ約7.5時間である一方で、急速充電による80%までの充電時間は前モデルよりも6分短縮した約32分での充電が可能になった。
二つめは、サスペンションの最適化や新タイヤの採用による、より上質で安定した乗り心地を実現したことだ。これまでのサスペンションチューニングを見直すとともに新開発タイヤを採用することで、路面からの振動やショックを低減している。また、電動パワーステアリングのアシスト力の最適化と、出力が増したことによるS-AWC制御の見直しにより、旋回中の安定性が向上。こうした技術により、上質な乗り心地とより安心感の高い操縦安定性を両立している。
インテリアはモダンでラグジュアリー
ナビゲーションモニターも大型化
三つめは内外装デザインを一部変更し、質感を向上させたことだ。エクステリアは、フロントアッパーグリルをスムーズな造形に。フロントとリヤのスキッドプレートは立体的なデザインにするとともに、カラーをチタニウムグレーとした。
また、車体全体の力強く存在感のあるデザインをさらに強調するため、アルミホイールはより上質感と力強さを表現した新デザインに変更している。ボディカラーには「ムーンストーングレーメタリック」を新たに採用。人気のソリッドな色調のグレーに、光の当たり方によってブルーのハイライトが映る特別なカラーとなっている。
「インテリアでは、最上級仕様のセミアニリンレザーシートのデザインを変更するとともに、シートやインストルメントパネルなどに新色の「ブリックブラウン」を採用することで、モダンでラグジュアリーな落ち着きのある室内空間となっています」(五味氏)。
四つめは、ナビゲーションモニターの大型化やコネクテッド機能の拡充、シートベンチレーション機能などを搭載することにより、利便性と快適性を向上させたことだ。
「スマートフォン連携ナビゲーションでは、モニターサイズを従来の9インチから12.3インチに大型化。コネクテッド機能の拡充により、Places API(グーグルによる目的地検索)や、ストリートビュー、航空写真ビューを見ることが可能です」(五味氏)。
また、運転席と助手席に体とシート間の熱こもりを防ぐシートベンチレーションや、常に優れた後方視界にできるデジタルルームミラーなども、ドライブを快適にする一役を担っている。
ヤマハと共同開発した
オーディオシステムを全車に採用
それだけではない。音質へのこだわりを追求した2種類のオーディオシステムを『アウトランダーPHEV』専用にヤマハと共同開発し、全グレードに搭載。アーティストの息使いまで再現する、中高音から重低音までのリアルなサウンドの表現を追求。スピーカーを搭載しているドアパネルの隙間を塞いでスピーカーボックスの役割を与えるとともに、スピーカー取り付け部の剛性も向上させることで不要なノイズの発生を低減。それにより、太く躍動感のある低音が実現した。
「最上級グレード『P Executive Package』に採用されたオーディオシステムでは、計12個のスピーカーとデュアルアンプの搭載に加え、車速に応じて音量や音質を自動調整するサウンド補正機能によりロードノイズの影響を低減し、あらゆる走行条件下で常に最高の音楽体験を提供できます。また、ほかのグレードのオーディオシステムでも、計8個のスピーカーを搭載し、高音から低音まで幅広い音域表現を実現しています」(五味氏)
『アウトランダーPHEV』のメーカー希望小売価格は526万3,500円~668万5,800円(消費税込)だが、令和5年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」の対象となっており、55万円の補助金を受けられる。『アウトランダーPHEV』は、「日常ではEV、遠出はハイブリッド」というコンセプトのもと、EVならではの力強く滑らかで静かな走り、さまざまな天候や路面でも安心・安全に楽しめる電動SUVだ。五味氏は言う。
「新型アウトランダーPHEVをひと言で言えば、内面を鍛え上げている車です。1回乗ってもらえばそのよさに気づくはず。ぜひ一度体感してほしいと思っています」。
INTERVIEWEE

五味 淳史 ATSUSHI GOMI
商品戦略本部
CPSチーム(Global Vehicle)
商品企画
チーフ・プロダクト・スペシャリスト
三菱自動車工業株式会社
東京都港区芝浦3-1-21
1970年6月に三菱重工業から分社し設立された。三菱自動車は現在、SUVづくりのノウハウとラリーで培った四輪制御技術、そして電動化技術に強みをもつ自動車メーカーとして世界から幅広い支持を集めている。また、ルノー、日産自動車とのアライアンスメンバーである。日本とASEAN諸国に生産拠点があり、グローバルで約2万8,000人の従業員を擁している。三菱商事の持分法適用関連会社でもある。