
三菱ふそうトラック・バスが、大型トラック「スーパーグレート」の新型モデルを2023年10月に発表した。2017年から6年ぶりとなるフルモデルチェンジだ。三菱ふそうトラック・バス
商品・経営戦略本部 大中型トラック・バス商品プロジェクト部
大型トラック製品プロジェクトマネージャーの伊原 忠人さんは、今回のモデルチェンジに至った経緯について次のように語る。
「スーパーグレートは1996年に初代モデルが誕生し、2017年、初めてのフルモデルチェンジの際には経済性、安全性、操作性、快適性の改善を目指し、キャブの一新に合わせて新しい電子制御システムを投入しました。今回のフルモデルチェンジのきっかけは、2024年5月から始まった大型トラックの安全規制と、2025年度を目標年度とする、自動車の省エネルギー化と環境に配慮した新たな燃費基準『2025年度重量車燃費基準(JH25モード)』への対応ですが、すべての性能をさらに進化させ、安全法規や燃費基準に適合するだけではなく、その一歩先を行くことを目指しました」
燃費性能が向上、先進安全装置はさらに進化し広範囲に

まず注目したいのは、燃費性能を向上させた「新型6R30エンジン(12.8L)」。長い坂道も余裕のけん引力と加速時の優れたレスポンスを併せ持ち、パワフルな走りと高い燃費性能を両立させた。また、キャブデザインの改良により空気抵抗を改善し、転がり抵抗の少ないタイヤを追加設定し、2025年度重量車燃費基準に適合。排気後処理装置によるNOx(窒素酸化物)浄化率も向上した。振動や騒音が少なく、ドライバーの疲労を軽減し、運転の快適性向上も期待できる。
さらに、大型トラックに求められる高度で広範囲での危険対応をサポートする先進安全装置を搭載。そのひとつ、衝突被害軽減ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト6(ABA®6)」は、前方認識カメラとミリ波レーダーが、走行中に先行車両や歩行者との衝突の危険を検知、マルチファンクションモニターでドライバーに警告し、ブレーキを作動して衝突被害軽減をサポートする。従来モデルと比べて障害物の検出機能を改善しただけでなく、誤検出となりやすい路上の障害物もより正確に検知して誤作動を予防している。
また、従来モデルでは大型トラックの死角となる左折時の巻き込み事故予防のため、車両左側の対象物を検出していたが、新たに搭載した「アクティブ・サイドガード・アシスト2.0」では、車体右側にもレーダーを付け、左側に加えて右側の自転車や歩行者を検出し警告。車線変更を行うときに隣のレーンに走行車両がいる場合にも警告する。

. 見通しの良いカーブでの障害物
渋滞などによりカーブに停車している車両や、カーブに沿った駐車場に停車中の車両、隣のレーンを走行中の車両など、見通しの良いカーブにある障害物を検知します。

2. 複数の歩行者・自転車の検出
走行中の自転車や、複数で路上を移動中の歩行者などを検知します。
※「アクティブ・ブレーキ・アシスト6」は、衝突被害軽減をサポートする
低速走行時前方衝突警報装置「Front Blind Spot Information System(フロント・ブラインドスポット・インフォメーション・システム)」は、発進時に前方に接近する歩行者や自転車を検出し、衝突の危険を警告。とくに、ドライバーの死角となりやすい前方直下の障害物も検知して警告する。後進時には高性能なリヤビューカメラによって車両の後方をモニターに表示することで、より広い範囲での危険対応をサポートする。
業界で異例となる短期間でのフルモデルチェンジ、
物流の課題に貢献していく

キャブスタイルも改良し、新開発のスーパーハイルーフをキャブバリエーションに新たに追加し、室内空間の快適性向上と空力の最適化を両立。キャブデザインには小型トラックと大型観光バスでも採用しているふそうのブランドアイデンティティである「ふそうブラックベルト」を採用し、ふそうブランドにふさわしいデザインに生まれ変わった。

「今回の新型スーパーグレートはお客さまに喜んでいただけるだけでなく、世に受け入れられる大型トラックを投入したいという開発コンセプトから生まれました。よりコンセプトに近づけるために、機能性や成立性を含めて、スタイリングチームともさまざまな議論を重ねました。新しいキャブを作って空力抵抗を改善し、キャブ内に安全基準に適合するセンシングシステムを組み込んだのですが、キャブの変更は2017年に行ったばかりで、大型トラック業界では異例の短いスパンでの開発となりました。2023年10月のジャパンモビリティショーでこの新型スーパーグレートを紹介したときに『よくやったね』『まさかやると思わなかった』と社外からも驚きの声があがり、うれしかったです」と、伊原さんは今回の開発の革新性に胸を張る。
三菱ふそうトラック・バスはダイムラートラック・グループの一員として、自動運転技術を含む高度な先進安全技術の開発を通じて安全性を高め、同グループ製のトラックやバスによる事故をゼロにすることを目指すミッション「ビジョン・ゼロ」に賛同している。2019年には、国内商用車では当時初めて運転自動化レベル2の高度運転支援機能を搭載した「スーパーグレート」を発売した。
物流・運送業界における「2024年問題」に伴い、輸送の効率化が急務となっている。快適性や安全性、操作性を強化し、優れた燃費性能とパワフルな走りを実現した新型「スーパーグレート」は、輸送の効率化に貢献していく。
INTERVIEWEE

伊原 忠人 TADATO IHARA
商品・経営戦略本部
大中型トラック・バス商品プロジェクト部
大型トラック製品プロジェクトマネージャー
三菱ふそうトラック・バス株式会社
神奈川県川崎市中原区大倉町10
90年以上の長い歴史を持つFUSOブランドのトラック、バス、産業用エンジンの開発と製造を行っている。ダイムラー・トラック・アジアの一員として、製品開発、部品調達、生産などの分野で協力し、世界約170ヵ国・地域のお客さまに効率性、安全性と信頼性の高い確かな品質の製品をお届けしている。