





千年くすのき プロフィール
原作:成田 誠一(なりた・せいいち)
『マンスリーみつびし』冊子時代に連載していた歴史エッセイ『千年くすのき』著者。本連載はこのコラムの漫画化。
漫画原作:星井 博文(ほしい・ひろぶみ)
漫画原作者、漫画家。『まんがでわかる 伝え方が9割』(ダイヤモンド社)など経済から歴史ものまで著書多数。「なんでもマンガにしちゃう男」
漫画作画:上川 敦志(かみかわ・あつし)
漫画家。小学館「少年サンデー」などで活躍。同社の学習まんがシリーズでも著書多数。『小学館版 学習まんが人物館 スティーブ・ジョブズ』(小学館)など。実は女性。
題字:藤田 紅子(ふじた・こうし)
書道家。毎日書道会審査会員、南不乗発会、現日会副会長、高知現日会長、安芸全国書展審査会員。安芸全国高校生書展審査員。
今でも現役!農業体験もできる千葉・旧岩崎久彌末廣農場別邸公園。
公園内に建つ別邸は、実は耐震補強住宅の先駆け的存在でもあった!

千葉県は富里市に、久彌が開場した末廣農場内に建築された末廣別邸(農場は昭和20年代前半に閉場)が残されています。この地は、江戸時代は馬の放牧場として使用され、明治の御代に大久保利通が日本初の牧羊場をつくったのですが失敗に終わり明治15年、民間に払い下げ、明治20年に岩崎彌之助が購入、久彌に土地利用を依頼したのがはじまりといわれています。土地が痩せていたので、松や檜を植林するところからだったとのこと。
久彌が本格的に末廣農場を手がけたのは大正8年ごろから。久彌は自己利益というものをあまり考えず、畜産と農業の改良、研究に没頭したようです。成果として、養鶏は年間45万個の卵を生産し、最高8千羽、養豚1千頭の飼育をしていたそう。自家製のハム、ソーセージ、ベーコンは立川養豚馬を通じて販売されたとのこと。富里市ののどかな風景のなか、今でも末廣別邸は当時の姿で残されています。見学もできて、農場体験もできる施設として地元との交流もあるようです。また、隣接地には末廣農場の名を継ぐ、観光・交流拠点「末廣農場」があります。ある晴れた初夏の日に、見学の機会を得て行ってきました!大きな看板が目印です。


入り口を入るとまず、雑木林と美しい花々が出迎えてくれます。訪問時は六義園由来の紫陽花がたくさん咲いていました。


こちらが、公園内にある、旧岩崎家末廣別邸です。大正末期から昭和初期の近代和風建築として国の登録有形文化財に登録されています。総檜の書院作りで美しい住宅なのですが、この末廣別邸のすごさはそれだけではありません。
この屋敷には当時としては異例ともいえる耐震補強が随所に施されているのです。


関東大震災の教訓を活かして、久彌が力を入れた耐震補強や震災への備えがあちこちに施されており、まるで現在の耐震住宅の先駆けのよう。屋根裏と床下の耐震補強や中庭から外で出られるトンネルを作るなど、細やかなディテールに驚くばかり。

また、晩年、末廣別邸で過ごすこととなった久彌が、台東区にある本邸から持ち込んだ洋式のバスタブなどこれまた当時としては珍しい西洋式生活を取り入れた生活も垣間見え、モダンにして最先端の感覚で住みこなしていた久彌別邸の当時の様子が偲ばれます。建築的価値、庭園的価値、歴史的価値のある末廣別邸なのでした。

また広大な庭にある東屋からは、岩崎家の象徴的な存在でもある、あの木を愛でることができるのです。

くすのきです。高知県安芸市の岩崎彌太郎生家にもある大きなくすのきはこの連載の元のルーツからタイトルがつけられています。末廣別邸にも立派なくすのきが。ちなみに六義園を含めその周辺に残る杉の木は、ここ末廣農場から運ばれ植えられたものだそうです。
さて、そろそろ畑のほうへ歩いていってみましょう。

「久彌さんの畑」という看板が。畑の土はふくふくと耕され、たくさんの野菜が太陽を浴びて元気に育っています。まるで今でも久彌さんが畑に出ていて、呼んだら出てきてくれそうな・・・そのスピリットは見事に受け継がれてきているようです。

末廣農場は単に農場としてだけではなく、農作物の試験場としても機能していたそうです。大豆、小麦、特に下総地方では収穫が難しかった大豆の多収穫方法を確立したり、 西瓜、白菜の原種の採取を千葉県に認められたりして日本の農業発展に貢献する役割も果たしていたのですね。

末廣農場では、収穫体験会やお茶会、マルシェなど毎月さまざまなイベントが開催されています。この日は収穫体験をさせていただきました。ご覧ください、土から抜いたばかりのにんじんやかぶの瑞々しいこと!


帰宅して料理をしてまたびっくり。じゃがいもは水分たっぷりで包丁を入れるとじゅわっと水が出てくるほど。こんなにおいしい野菜が関東近郊で収穫され、食べることができるとは。夢に出てきそうなくらい新鮮野菜の滋味を味わうことができました。
また、観光・交流拠点「末廣農場」にはレストランもあります。もちろん食材は日本一の収穫量を誇る富里にんじんなどの豊富な野菜をはじめ、脂までおいしい房総ポーク、千葉県のブランド豚、ダイヤモンドポークなど地元の美味を堪能できるのです。


ここに来たら豚でしょう、ということで末廣ダイヤモンドポーク定食をオーダー、もちろん付け合わせの野菜までおいしかったです!


見学会の最後は、富里スイカを畑でいただくという至福のひととき。大きく丸い富里スイカ、甘くて水分たっぷりでほんとうに美味。とうもろこしもおすすめだそうで、季節ごとに訪れる楽しみもある場所なのだと思います。
末廣農場
千葉県富里市七栄光650番地206
詳細はこちら
※体験会や見学はHPを参照のうえご確認ください