
寒さゆえ、冬眠を決め込んでいたゴルファー達が動き出す季節がやってきた。冬枯れの芝が青く色づき始め、新緑がきらきらと輝き出す春から初夏は最高のゴルフシーズン。茹だるような暑さにつかまるその前に、少しでも多くラウンドして、素晴らしい思い出をつくりたい、それがゴルファーの本音だろう(願わくばベスト更新も)。
ならば、たまには気分を変えて、“島ゴルフ”を目的に旅に出るのも一興だ。まるでジオラマのような壮大な景色のなかに身を置き、無心になって球を追う。プレーヤーだけが見ることのできる絶景をとことん目に焼きつける。18ホールを終えたあとに残るのは、突き抜けるほどの爽快感だ。非日常世界が広がる、“島ゴルフ”の世界へ、いざ。
【長崎県】島唯一の本格18ホールを備えた“埋もれた宝石”
『五島カントリークラブ』
2,000を越えるといわれる日本のゴルフ場のなかでも、島に限定するとその数は少ない。コースを存続させるだけの来場者数を島民だけでカバーするのが難しいというのが一番の理由だろう。だがもちろん、あるところにはあって、あまり多くの人に知られていないからこそ、“埋もれた原石”のような輝きを放ち、誰かに見つけてもらうことを待っている。

長崎県、五島列島唯一の18ホールを備えたゴルフ場「五島カントリークラブ」はまさにそれだ。長崎市から西へ100km離れた10の有人島と53の無人島で構成される五島列島。世界遺産に登録されたカトリック教会や豊かな海の恵みから“釣りの聖地”と呼ばれるなど、多彩な魅力を持つ島々としても知られる。

そんな五島列島のなかで最大の面積を誇るのが福岡空港から飛行機で約45分の福江島。五島観光の中心を担う島でもあり、「五島カントリークラブ」があるのもここだ。

空港からは車で約10分。ティーグラウンドに立つまでが驚くほどスムーズで、“島ゴルフ=アクセス困難”というイメージは簡単に覆される。福岡から日帰りで訪れるプレーヤーがいるというのも納得だ。

肝心のコースはというと、開場は1971年と古く、ローカル感たっぷりのクラブハウスからも重ねてきた年月がうかがえる。だがやはり、圧巻なのは各ホールからの眺めだろう。標高315メートルの鬼岳の中腹に位置するということもあり、東シナ海を見下ろす大パノラマが眼前に広がる。
高層ビルや電線など、コースの雰囲気を削ぐようなものが一切目に入らないぶん、空は圧倒的に広く、海と山を間近に感じられ、非日常感しかない。

2023年にはロゴマークを五島列島のアイコンともいうべき椿の花をベースに、花芯をクラブに見立てたデザインにリニューアル。2サム&スループレーOK、カートにはGPSナビも完備と、リゾートコースとして今後さらに注目が高まるに違いない。

そして、「五島カントリークラブ」でのプレーと宿泊がセットになったスペシャルパッケージプランがあるのが島随一のラグジュアリーホテル「五島リトリート ray by 温故知新」だ。
「眼前に広がる海と空の景観を建物内に取り込む」というデザインコンセプトの通り、ロビーをはじめ、ゲストルームから刻一刻と変わる海と空を眺める時間は至福の時。

地元産のクラフトジン「GOTOJIN」を片手に、バーでその日のプレーの反省会をするもよし。館内の「ray spa」でオリジナルアロマによる心と肌、身体のトリートメントプログラムを受けるもよし。

ゲストルームは全室オーシャンビューなうえ、露天風呂付きというのも非日常モードを後押し。ぐっすり眠った翌朝は、まるでご褒美のような朝焼けが待っている。
未体験の島ゴルフ、そのすべてを五島で体験してほしい。
『五島カントリークラブ』
〒853-0011 長崎県五島市下大津町1985
☎︎ 0959・72・4526
『五島リトリート ray by 温故知新』
〒853-0023 長崎県五島市上崎山町2877
総客室数:26室
☎︎ 0959・78・5551
【沖縄県】風を読んで挑む、絶景海超えホール
『ザ・サザンリンクスゴルフクラブ』
“島ゴルフ”と聞いて、真っ先に浮かぶのはやはり沖縄。穏やかな日であれば、2月、3月でも半袖でプレーできる日もあり、何枚も重ね着して防寒対策する必要はない。毎年3月に女子ツアーの開幕戦が沖縄で行われるのも、寒さを回避してのことだろう。

また、スギやヒノキが少ないことから、春になると花粉から逃れるようにこの地を訪れるゴルファーも多く見かける。だが、沖縄が“ゴルフ天国”といわれる理由は、それだけではない。本島各地に個性豊かなコースが点在し、トーナメント開催実績を誇る本格コースが複数あること。
そして、海を背景にした絶景を望めるコースがあることも大きい。

例えば、「ザ・サザンリンクスゴルフクラブ」はその代表格だろう。那覇空港から南に約30分。アウトレットモール「あしびなー」からもほど近い海沿いに展開する18ホールは、ハワイともまた異なる沖縄らしい絶景に出会えるとして、その人気は絶大だ。

雄大な海岸線と南国の力強い自然が織りなす風景は実にダイナミック。40メートルを越える断崖絶壁に立ち向かう勇気が要求される7番パー4、眼下に広がる太平洋越しにグリーンを狙う8番パー3など、名物ホールはいずれも挑戦意欲を掻き立てられる。

全室オーシャンビューのホテルも併設され、1日中グリーンと海を間近に感じられる環境はまさに天国。ゆるりとした空気に包まれながら、太平洋を望む大パノラマをバックにビールで乾杯と決め込もう。
『ザ・サザンリンクスゴルフクラブ』(アコーディア・ゴルフ)
〒901-0513 沖縄県島尻郡八重瀬町字玻名城697
☎︎ 098・998・7001
【東京都】高速船で最短1時間45分!船旅も楽しめる
『伊豆大島リゾートゴルフクラブ』
富士箱根伊豆国立公園に属する伊豆大島は、れっきとした“東京都”。あまり知られていないが実は、そんな都内にも“島ゴルフ”が楽しめる場所がある。
2021年に「伊豆大島リゾートゴルフ」として新たな一歩を踏み出したコースがそれだ。1956年の開場当時より、強引に重機で整地することなく、元々の地形を活かしているというコースは、レイアウトも景色もとにかくダイナミック。

とくに1番ホールからの眺めは絶景で、空気の澄んだ冬は海の向こうに広がる伊豆半島、さらにその先には美しい富士山が姿を見せる。

そして夏になれば、緑のグラデーションに覆われたコースが視界いっぱいに広がり、心身をリフレッシュへと導いてくれる。
コースは9ホールのみだが、ティーグラウンドやグリーンの位置を変え、18ホールとしてラウンドすることが可能。それはまるでアトラクションのようで、ティーグラウンドに立つ度にワクワクする。

朝、昼、夕方とプレーする時間帯によっても見せる表情は異なるが、おすすめはサンセットタイム。ピンクとオレンジに染まった大パノラマは、ずっと眺めていても飽きることはない。
東京・竹芝から高速船(ジェットフォイル)で約1時間45分。静岡県・熱海であれば約45分で辿り着ける、渋滞知らずの“島ゴルフ”だ。
『伊豆大島リゾートゴルフクラブ』
〒100-0102 東京都大島町岡田大久保26
☎︎ 04992・2・9300
構成・文/一寸木芳枝