ライフスタイル企画

2024.11.28

旅企画「目的旅のススメ」

『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で
注目のデスティネーション

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レストランガイドで世界的に知られるミシュランが発行している旅行ガイド、「ミシュラン・グリーンガイドシリーズ」。その日本版、『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』は2009年に発行されて以来、第6版まで改訂を重ね、訪日外国人観光客の日本旅行のプランニングに大きく影響を与えているといわれる。

おすすめの場所としての評価基準は、第一印象に始まり、芸術品や史跡の固有の美術的価値、作り物ではない本物としての魅力と調和している点など、9つの多岐にわたり、フランス人と日本人からなる12人の編集チームが数か月かけて日本を縦断。独自の調査結果を踏まえ、リストアップされた場所の数々は、私達にも新しい発見と驚きを与えてくれる。
今回は2020年2月に発表された改訂第6版に新規掲載されたデスティネーションのなかから3つをピックアップして紹介しよう。

【静岡県】ダイナミックな流れとマイナスイオンで爽快感たっぷり『河津七滝』

伊豆半島の先端部近くに位置する河津町。毎年2月上旬に満開を迎え、早春の春を告げる濃いピンク色の河津桜で全国的に知られる。

また、約1500年前に開湯したと伝えられる谷津温泉を始め、川端康成の代表作『伊豆の踊子』にも登場する湯ヶ野温泉など、歴史ある温泉地としても名高い。とくに古い温泉宿が並ぶ湯ヶ野温泉は川端自身も愛し、何度も訪れたという。

写真提供:河津町提供

そんな見どころあふれる河津町のなかで『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』の星2つを獲得し、「寄り道する価値がある」と評されたのは、町の北エリアに点在する7つの滝、「河津七滝」(かわづななだる)だ。

全長850mの遊歩道から眺める大自然は季節ごとに美しい姿を見せ、片道約1時間の散策もあっという間。迫力あるダイナミックな滝から吸い込まれそうな美しさを見せる滝まで、滝とひと言でいってもその種類は実にさまざまで、飽きることはない。

写真提供:河津町提供

絶好のフォトスポットは、長い階段を下りた先にある「初景滝(しょけいだる)」に設置された『踊り子と私』の像。主人公の青年と踊り子の2ショットに、『伊豆の踊子』の叙情が鮮やかに蘇る。

そして、7つの滝を巡る散策のクライマックスにふさわしいのは、落差約30m、幅約7mと河津七滝で最大規模を誇る「大滝(おおだる)」だ。

写真提供:河津町提供

豪快に流れ落ちる水の様子は展望デッキから一望でき、その迫力ある姿は見ているだけでスカッとした気分になること確実。滝壺が見せる美しい青のグラデーションにも息を呑む。

道中には軒先に天城山の清水で育ったわさびが並んだ飲食店や土産物店が点在。ご当地グルメでお腹を満たすのも旅の醍醐味だけに、名物の「わさび丼」を食べるのも忘れずに。

『河津七滝』

〒413-0501 静岡県賀茂郡河津町梨本
☎︎ 0558・32・0290(河津町観光協会)
※大滝のみ歩道の開放時間あり(6月~9月:8時~18時、10月~5月:8時~17時)

【鳥取県】美しくも儚い砂像で世界旅行を叶える『砂の美術館』

鳥取県を代表する観光地、鳥取砂丘。南北2.4km、東西16kmに広がる海岸砂丘は国の天然記念物であり、最近ではドラマ『VIVANT』のシーンをここで再現する“VIVANTごっこ”が話題になったことも記憶に新しい。

鳥取砂丘は中国山地の花崗岩や安山岩、玄武岩などの岩石が風化作用を受けて砂となり、千代川によって日本海に運ばれて堆積。その砂が、長い年月をかけて風によって運ばれてできたとされる。悠久の時を経て自然が生み出した、まるで異世界のような造形美は今なお、多くの人々を惹きつける。

写真提供:©鳥取県

その砂を素材に、人の手による彫刻「砂像」を展示しているのが鳥取砂丘に隣接する『砂の美術館』だ。2012年に世界初の砂像専門屋内展示施設として開館。

国内外で活躍する茶圓勝彦氏がプロデュースを手がけ、“砂で世界旅行”をコンセプトに、2006年以降定期的にテーマを変えて展示を行なっている。

写真提供:鳥取砂丘 砂の美術館

これまでにイギリス、東南アジア、南米、北欧、エジプト編など世界各国の見どころを砂像で表現。2024年4月19日から2025年1月5日までは、第15期展示「砂で世界旅行・フランス編」が開催されている。

使用された砂の量は約3,000t。砂像はいずれも水だけで固めた砂のブロックを彫刻して造形。素材が砂ゆえ、制作中は常に崩れるリスクが付きまとうという。だが、そんな苦労を重ねて完成した作品も、会期が終わったあとはすべての作品を崩し、元の砂に戻す。

写真提供:鳥取砂丘 砂の美術館

幅22メートルの巨大な砂像・ヴェルサイユ宮殿も、ここでは限られた期間しか存在しない。その儚さもまた砂像の持つ魅力なのだろう。

来期(2025年4月25日~2026年1月4日)の展示テーマは「砂で世界旅行・日本」。富士山や京都など、代表的な景勝地をはじめ、寺社建築や浮世絵、誰もが知る歴史の一場面などを砂像で表現するというから楽しみだ。

『砂の美術館』

〒689-0105 鳥取県鳥取市福部町湯山2083-17
☎︎ 0857・20・2231
営業時間: 9時〜18時 ※最終入館17時30分
入館料:大人800円、小中高校生400円

【宮崎県】九州の小京都と呼ばれる情緒あふれる城下町『飫肥( おび )

1588年から明治初期までの280年間、飫肥藩・伊東氏の城下町として栄えた飫肥(おび)。江戸時代の武家屋敷や商人町が今なお多く残る美しい歴史の町だ。

風情ある石垣が残る町並みは、昭和52年に重要伝統的建造物群保存地区にも選定され、樹齢 100 年の飫肥杉を使用して復元された飫肥城大手門を中心に、豫章館(よしょうかん)、旧藩校振徳堂、松尾の丸、飫肥城歴史資料館、小村寿太郎記念館などのほか、商人町通りには商店が軒を連ねる。

写真提供:日南市観光協会

商品引換券5枚と施設入館券がついた「あゆみちゃんマップ」を片手に町歩き、食べ歩きを楽しみながら、是非とも立ち寄りたいのは、樹齢140年の飫肥杉が立ち並ぶ旧本丸跡だ。

写真提供:宮崎県観光協会

天に向かって真っ直ぐに伸びた杉木立と、その足元には深い緑の苔のじゅうたんが広がり、ただ立つだけで心身がデトックスされていくよう。この場所が“癒しの森”と呼ばれるのもうなずける。

写真提供:宮崎県観光協会

毎年10月に行われる「飫肥城下まつり」では、江戸時代から伝わる「泰平踊」が披露され、優雅さと毅然とした踊りに多くの観光客が拍手を送る。

ほかにも南九州の武将達の間で酒宴の席などの余興として行われていた「四半的(しはんまと)」体験ができる射場もあり、家族で挑戦してみるのもおすすめだ。

『飫肥』

〒889-2535 宮崎県日南市飫肥9-1-14(飫肥城観光駐車場チケット販売所内)
☎︎ 0987・67・6029(飫肥城下町保存会)

構成・文/一寸木芳枝

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