ライフスタイル企画

2024.10.31

旅企画「目的旅のススメ」

自然が織りなす奇跡の錦絵を追いかけて。
紅葉を愛でる秋休み

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災害級ともいわれた今夏の暑い記憶も、過ぎてしまえばもう思い出すこともない。今はただ、澄んだ秋の空気に身を委ね、1分1秒でも長くこの気持ちのいい季節が続くように願うばかりだ。そしてまもなくやって来る紅葉に思いを馳せ、今年はどこで観賞しようか、そろそろ旅の計画を立てたいところ。
最も早くシーズンを迎える北海道では9月中旬から10月下旬にかけて見頃を迎え、以降、少しずつ南へと移っていく。九州では場所によって、12月中旬まで美しいグラデーションを眺めることも可能。つまり、紅葉に合わせるのではなく、休みのタイミングに応じて紅葉を追いかけることも可能なわけだ。では、“紅葉を愛でる秋休み”、あなたはどこに出かけますか。

【青森県】まるで絵画の世界に迷い込んだような絶景のなかを歩く『奥入瀬渓流』

青森、秋田の両県にまたがる十和田湖とそこから流れ出る、深い自然林におおわれた奥入瀬渓流は、ともに日本を代表する景勝地として知られる。

特に四季の移ろいと共に千変万化の表情を見せる奥入瀬渓流は、ミシュラン・グリーンガイドで二つ星に選ばれ、世界からも注目されるネイチャースポットだ。

奥入瀬渓流に紅葉のフィルターがかかるのは、10月から。ブナやカツラをはじめとする100種類以上の樹木が赤黄茶に染まり、まだ少し残る緑と共に森に奥行きをもたらしながら、日を追うごとに小刻みに色づいていく。

十和田湖の子ノ口から焼山まで、約14km続く渓流沿いには、車道と遊歩道が整備され、秋には約60万人がこの地を訪れるという。

自然が生み出す絵画のなかに迷い込んだような散策は、下流から上流へと進むのがおすすめだ。光の加減が美しく、どこを切り取っても絵葉書のような景色をレンズに収めることができるからだ。

視線を上げれば、奇岩、樹林、滝があり、足元へ目をやれば、ツツジやカエデ、苔におおわれた岩がある。それらすべてが調和した清らかな景色に身を置くだけでも、心身が浄化されていくのを実感できるはずだ。

奥入瀬渓流沿いに建つ唯一のリゾートホテル「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」に宿泊し、紅葉を眺めながら、心ゆくまで湯浴みを楽しむのもいい。

早朝に散策すれば人も少なく、朝靄に木漏れ日が射し込む幻想的な風景が見られる可能性も。本格的な冬が訪れるその前に訪れたいスポットだ。

『奥入瀬渓流』

〒018-5501 青森県十和田市奥瀬十和田湖畔休屋486(一般社団法人 十和田湖国立公園協会)
☎︎ 0176・75・2425

【岡山県】雲海と紅葉に包まれた幻想的な“天空の山城”『備中松山城』

江戸時代以前の天守が現存するのは日本でわずか12城のみ。愛知県の犬山城、滋賀県の彦根城、兵庫県の姫路城らに代表されるそれらは「現存12天守」と呼ばれ、全制覇を試みる城好きも多い。
そんな「現存12天守」のなかでも唯一の山城として、揺るぎない存在感を誇るのが臥牛山小松山山頂にそびえる備中松山城だ。

写真提供:岡山県観光連盟

その起源は鎌倉時代とされ、1683年に水谷勝宗によって3年がかりで修築され、今の天守の姿になったとされる。

場所柄、山陰と山陽を結び、東西の主要街道も交差する要地であるため、戦国時代は激しい争奪戦が絶えず、目まぐるしく城主交代が繰り返されてきた。

写真提供:岡山県観光連盟

標高は430m。登城坂の周囲は高さ10m以上の巨大で切り立った岩壁がそびえ、“難攻不落の城”と恐れられていたのもうなずける。が、この城のもう一つの魅力は紅葉と雲海だ。雲海が見られるのは9月下旬から4月初旬。風のない冷え込んだ早朝が狙い目だが、紅葉シーズンと重なる10月、11月はとくにその可能性は高まり、幻想的な姿を見られるという。

写真提供:岡山県観光連盟

白い漆喰塗りの壁と黒い腰板のコントラスト、空の青に映える美しい天守。木々が紅葉した大手門付近と燃えるような朱色におおわれた岩壁。間近で見ても迫力満点だが、雲海と紅葉、城を一度に臨めるスポットとしては、備中松山城雲海展望台がおすすめだ。

2段に分かれた木製の展望デッキから眺めると前方に備中松山城。左が天守、右が二重櫓、そして眼下には高梁川と川に沿って広がる高梁市の市街地を望むことができる。

紅葉と城、雲海が織りなす大スペクタクルを目に焼き付けよう。

『備中松山城』

〒716-0004 岡山県高梁市内山下-1
☎︎ 0866・21・0461(高梁市観光協会)
入城時間: 9時〜17時30分(4月〜9月)、9時〜16時30分(10月〜3月) ※最終入城30分前
入城料:大人500円、小中学生200円

【大分県】極彩色の絨毯がどこまでも広がる“九州の屋根”『くじゅう連山』

九州本土最高峰の中岳(標高1,791m)をはじめ、標高約1,700m級の山々が連なるくじゅう連山。朝夕の冷え込みが激しいため、例年10月20日ごろから11月初旬にかけて、一帯で見事な紅葉を見ることができる。

秋の始まりを告げるのは、シラヒゲソウ、アケボノソウ、ワレモコウといった草原の植物。それらが次々に花を咲かせる10月中旬ごろ、山頂から色づき始める。

くじゅう連山の東の主峰・大船山、とくに山頂直下の御池(おいけ)は随一の紅葉の名所。紅葉するとカエデやドウダンツツジなどが、山肌や湖面を美しい色に染める。

くじゅう連山一帯は多くの登山口があり、初心者から上級者まで、レベルに応じた登山客を楽しめるのも魅力だ。

11月中旬頃にはくじゅう連山の麓、標高1,000mに位置するタデ原湿原ではススキの穂が揺れる。約38haという湿原を埋め尽くすように広がる黄金色の風景もまた、美しい。

赤から黄金色へと変わっていく、山の表情を楽しもう。

『竹田市観光ツーリズム協会』

〒878-0011 大分県竹田市大字会々2335-1
☎︎ 0974・63・0585

『九重町観光協会』

〒879-4801 大分県玖珠郡九重町大字右田714-28
☎︎ 0973・73・5505

構成・文/一寸木芳枝

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