
三重県四日市市に立地する三菱ガス化学 四日市工場は、美しい伊勢湾の間近に位置する。1963年に操業開始し、172名が在籍(2023年10月時点)。2つの分工場、浪速製造所(大阪市)、佐賀製造所(佐賀市)と合わせて「四日市工場」となっている。

くらしを支える製品を生み出すプラントが広大な敷地内に立ち並ぶ。
四日市工場で製造しているのは、紙パルプの漂白やほかの工業用途に使用される「過酸化水素」、半導体製造時の洗浄剤や表面の加工などに使用されている「超純過酸化水素」「ELMクリーン」、発泡剤、ボイラー清缶剤、医薬・農薬原料として使用されている「水加ヒドラジン」、高速通信用基板の材料として使用されている「オリゴフェニレンエーテル」。いずれも私達のくらしを陰で支える製品ばかりだ。今回はそんな四日市工場で働く5人に、仕事のやり甲斐や魅力を聞いた。
上司から気軽に話しかけてくれるので相談しやすい

工事業者、製造担当者など多くの関係部門との調整をする高橋さん。メンテナンスや修理を早く安全に行わなければならない。
工務部工務課(電装チーム)の高橋 響さんは、電気計装の設備保全担当として、プラントを安定・安全運転するためのメンテナンス計画づくりとその実行や、設備トラブルを減らすための活動、そして大きな工事や増設計画の仕様検討を行っている。
万が一トラブルが起きれば、その原因をつきとめるところから始まり、修理、復旧までを2~3日という短期間で行わなければならない。生産計画に影響が出ては顧客に迷惑がかかってしまうからだ。
「工事協力会社さんや製造課など関係者が多く、連携ができていないとメンテナンスや工事計画に支障が出てしまいます。日頃からこまめにコミュニケーションをとることを心がけています。四日市工場は従業員同士の距離が近く、話しやすい環境だとよく感じます。上司から気軽に話しかけてくれるので、緊張することなく相談しやすいですね」(高橋さん)

迫さんは精密さが要求される品質検査担当。厳しい目があってこそ高い品質と信頼を守ることができる。
品質保証部検査課の迫 拓巳さんは、半導体会社向けに出荷される超純過酸化水素を含んだ薬液を、決められた濃度であるか、超微量の不純物が入っていないかなど細かく分析し、不適合品が出荷されないよう品質検査を行う。2019年の入社以来、この業務に携わってきた。非常に高い分析精度が要求され、「その期待に応え続けることが私の使命」と語る。
「これまでは上司に教えてもらってばかりでしたが、最近は自分が教える立場に。教えることは難しいですね。四日市工場はみんな和やかで部署を超えた交流も多い。私もほかの部署の同期を誘って趣味でブラジリアン柔術を習っています」(迫さん)
ハイレベルな品質分析に対応、この技術を伝承していくことが課題

より高い純度を求める顧客の要望に応えるため、品質検査の要となる機器の調整を行う戸井さん。後進の育成にも励む。
ブラジリアン柔術とは珍しい趣味だが、そもそも迫さんをブラジリアン柔術に誘ったのは、迫さんと同じ品質保証部検査課の戸井 憲一さん。電子工業薬品(ELMクリーン)の成分分析において年々高度になっていく顧客の要望に合わせて、もっと精密に分析できるように機器を調整、場合によっては新しい機器を立ち上げるなど、分析精度の向上に日々奮闘している。
「分析精度を上げることは簡単にはできないので、慎重に検討を重ねて達成させることができたときにはやり甲斐を感じます。細かく難しい課題にストレスを感じたときは、ブラジリアン柔術で発散します」(戸井さん)
今の課題は技術伝承だ。
「作業標準を読んで頭で理解ができたとしても、なぜこうしなければならないのか、別のやり方をしたらどうなるのかは、実際に体験して納得しないとなかなか分かってもらえない。培った技術をいかに伝えていくかをいつも考えています。四日市工場はみんな仲がいい。とくに品質保証部検査課は家族みたい。迫くんは自分の子どもと同じ年ということもあって、息子のように大切に育てています」(戸井さん)
男性も女性も子育てしながら長く働き続けられる会社

入社以来、過酸化水素の研究一筋の野頭さん。専門知識と高い技術力をもって、粘り強く研究を積み重ねる。
研究開発部 第二グループの野頭 亜理沙さんは、過酸化水素を不純物の少ないきれいな超純過酸化水素にする精製手法を研究している。人体からも不純物が混入し、データに影響してしまう世界。不純物を精度高く制御して、再現性良くデータを収集することに苦労する。プライベートでは小さな子の子育て中でもある。
「工場というと男性が多いイメージですが、四日市工場は女性社員も年々増えています。小学3年生まで時短勤務制度が活用できるなど、子育て支援制度もしっかりしていますし、みんなフレンドリーで仕事以外でも一緒に食事をする機会が多く、部署や年齢に関係なく和気あいあい。長く働き続けられる会社だと思います」(野頭さん)

伊藤さんはみんなが働きやすい会社を目指し、バックオフィスから四日市工場の従業員達をしっかりと支えている。
管理部総務グループの伊藤 佳奈さんは、従業員の給与、社会保険手続き、福利厚生関係と幅広く担当。国の制度に関わることが多く、常にアンテナを張って情報収集、知識をアップデートしている。従業員の質問に対して的確に説明し、「理解できた」「助かりました」と言われることにやり甲斐を感じるという。
「部署を超えてさまざまな従業員と話す機会が多いため、四日市工場の約170人の顔と名前は一致しています。育児休業の担当でもありますが、各部署とも男性従業員が育児休業を取得することに対する理解があると感じますし、実際に取得率も高いですよ」
化学を扱う工場だけに業務においては非常に高度で精密な技術が要求されるが、働く人々はみんな笑顔。家族的なあたたかさにあふれている。

高橋 響
HIBIKI TAKAHASHI
工務部工務課(電装チーム)

迫 拓巳
TAKUMI SAKO
品質保証部検査課

戸井 憲一
KENICHI TOI
品質保証部検査課

野頭 亜理沙
ARISA NOGASHIRA
研究開発部 第二グループ

伊藤 佳奈
KANA ITO
管理部総務グループ