トップインタビュー

2025.04.03

三菱養和会

「和を養い 和を貴ぶ」
スポーツを通じて、豊かな人間性を涵養する三菱養和会

三菱関連企業のトップのお考えやお人柄をお伝えする連載『トップインタビュー』。第23回は三菱養和会理事長の上原 治也氏に三菱グループの総合スポーツクラブである同会の歴史や役割、社会貢献の意義などについて聞いた。

中学から大学までバスケットボールに打ち込んできた。今振り返れば、スポーツマンシップとして学んだチームメイトや相手を尊敬することが仕事でも大事であると感じたという。

公益財団法人三菱養和会 理事長
上原 治也(うえはら・はるや)

1946年東京都生まれ。1969年上智大学経済学部卒業後、三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。1996年取締役資金為替部長、1998年常務取締役資金企画運用部長、2001年専務取締役、2002年取締役副社長、2004年取締役社長、2008年取締役会長、2012年最高顧問、2018年特別顧問(現職)。2022年旭日重光章受章。

――三菱養和会が設立された背景をお聞かせください。

上原もともとの起源は、1914年、三菱三代社長 岩崎久彌による三菱倶楽部の設立まで遡ります。体育・文芸などを通じた、社員の精神的修養を掲げて設立した倶楽部です。その三菱倶楽部を改組して、三菱養和会が設立されたのが1940年となり、三菱四代社長 岩崎小彌太が初代会長として就任されました。ちなみに旧三菱倶楽部、そして現在の三菱養和会がある巣鴨の地は、明治時代に岩崎彌太郎が六義園から地続きで保有した土地の一角となります。


三菱養和会設立時に初代会長の岩崎小彌太が定めた「三菱養和会教条」には「養和の精神に生きてともに奉公の大義に進むべし」とあり、“文化芸術やスポーツを通じて、心身鍛錬の場として養い、ともに国や社会に奉公しよう”という思いで三菱養和会は設立されたものです。


戦後には一般利用者の受け入れも開始し、また1975年には、三菱創業100周年記念事業の一環として、東京都豊島区巣鴨にスポーツセンターをオープンしました。この巣鴨スポーツセンターの設立により、幅広い年齢層を対象にしたスポーツの普及・振興および健康の維持増進に関する事業、会員を対象としたスポーツ施設の運営に関わる事業へと発展させていきました。
さらには、2011年4月、東京都から公益財団法人として認定を受け、「養和の精神により、スポーツの普及振興を通じて、国民の心身の健全な発達に寄与し、豊かな人間性を涵養する」ことを目的とする「公益財団法人三菱養和会」となり、現在に至っています。

本館には公式競技も行える50m室内温水プールや、さまざまなスポーツを行える多目的体育館もあり、自分に合った競技を選択できる。

――三菱養和会の「養和」の意味とその精神を教えてください。

上原三菱養和会の名称は、三菱四代社長 岩崎小彌太が定めたものです。1940年11月に岩崎小彌太が、財団法人三菱養和会を設立し、その経緯とその根本精神を「三菱養和会設立に際して」および「三菱養和会教条」で説いています。すなわち、「和を養い 和を貴ぶ」という「養和の心」の大切さを説いたものとなります。
岩崎小彌太の事業観は「事業は国家社会に奉仕すべきものであり、事業の盛衰は人にあり、社員の人格の養成が事業の隆盛をもたらす」との信念に基づき、それは「人の和」にあるとされました。これが岩崎小彌太の事業哲学であり、三菱養和会が設立されたゆえんでもあります。
三菱養和会は、スポーツを通じて、人々の心身の健全な発達を広げ、豊かな人間性を涵養するという、その「養和の精神」を今でも大切に受け継いで、さまざまなスポーツの事業促進を行っています。

武道場「思斉館」。小学1年生からシニア世代までの方々が日々稽古に励んでいる。

常に工夫を重ねて
課題を突破して行くことが大切

――岩崎小彌太の哲学はどういったかたちで養われたのでしょうか。

上原岩崎小彌太は、1899年東京帝国大学に入学し、在学1年の後、英国に留学します。1905年ケンブリッジ大学3カ年の学業を終え、バチェラー・オブ・アーツの学位を受けて帰国しました。その頃の大義奉公・質実剛健を旨とする三菱精神と英国仕込みの社会改良思想の精神が、のちに「三菱倶楽部」を改組・設立した「財団法人三菱養和会」につながっています。

――理事長が信託銀行で働いていらっしゃる頃に「養和の精神」を感じられたことはありますか。

上原三菱グループの会社に勤めていますと、自分の置かれた立場で考えることはもちろんですが、誰かに相談したり意見を聞いたりした方がいいんじゃないかと思ったとき、すぐにグループの最適な方が思い浮かびます。グループに各事業領域があるなかで、とくに人事・総務系についてはお互いに知恵を共有し合う土壌があるように思います。同じグループだからこそ、本音で話し合える。そうしたことに「養和の精神」を感じることがありました。

――理事長が考える、スポーツを通じて得た心構えの育成は、社会にどのように役に立つでしょうか。

上原私自身、学生時代にバスケットボールに打ち込んでいました。スポーツは、まず自分に勝つことが重要です。同時に、困難から逃げたくなる気持ちを克服しなければなりません。
社会人になってからは逃げたくなることの連続で、誰かにボールをパスしたくなったことがたくさんありました。しかし、スポーツで“難しく苦しい道を選んだ方がいい”ということを学んだおかげで、社会人としての責任を果たしてこられたと思います。
大学時代は弱小チームで、思うようなプレイができる環境にありませんでしたが、そうしたなかでも「なにくそ!」と工夫を重ねました。それは社会に出ても同じであり、常に工夫を重ねて課題を突破して行くことが大切です。学生時代の経験は、会社に入ってからも大いに役立ちました。

技術の向上のみならず、礼儀やマナー、
主体性をも身につける指導を行う

――三菱養和会からは、多彩な分野でスポーツに貢献した方々を輩出されております。その理由をお聞かせください。

上原三菱養和会では、小さなお子様から高校生までを対象に、サッカー・スイム・体操・テニス等をはじめとしたさまざまな分野のスポーツスクールを実施しています。その「スポーツを通じて健康な心身を育む」という理念のもと、まずはスポーツを楽しむことから始め、子どもの成長に合わせて、技術の向上のみならず、礼儀やマナー、そして主体性をも身につける指導を行っています。
すなわち、子どもの心身の成長を促すことにとどまらず、スポーツを通じて「和」を養うこと、一人の人間として立派な人格や振る舞いを身につけさせることに指導の重点を置いています。そのような伝統的な「養和の心」を養ってくれた子ども達が、それぞれの分野でスポーツを究めていき、その分野での貢献や恩返しをしてくれています。
一方で、社会に出て、スポーツ以外での社会貢献や恩返しをしてくれる卒業生がいるのも事実です。多くの三菱養和会の卒業生がさまざまな分野で社会に貢献してくれていることは、大変うれしい限りです。


世界で活躍している日本のスポーツ選手のインタビューを見ていますと、誰であれ、しっかりとした受け答えをしています。こうした場面を見ていると、スポーツを通じてきちんとした教育ができていると感じます。三菱養和会でもたくさんの子どもや青年達を指導していますが、コーチや指導者が道徳やスポーツマンシップなど、社会人になるうえで必要なことを、スポーツを通じて還元してくれていると思います。運動能力だけではなく、人間力を学んでいるといえます。だからこそ、大成していくのでしょう。

三菱養和会を通じて
肌感覚で触れられる三菱ならではの精神

――三菱養和会を初めて聞く方もいらっしゃいます。どんなスポーツと活動に取り組んでいらっしゃるか簡単にご教示ください。

上原「巣鴨スポーツセンター」は、体育館、トレーニングルーム、スタジオ、プール、器械体操練習場、人工芝グラウンド、ゴルフ練習場、武道場等を有する総合スポーツ施設となります。サッカー、スイム、体操、テニスをはじめとした9種目のジュニア向けスクールと、7種目の成人向けスクールから構成されるスポーツスクールの運営を行っています。
また三菱関係者や地元地域の方々を対象としたスポーツクラブの運営を行っているほか、三菱社員向けにグラウンドや体育館等の施設貸出しも行っています。
巣鴨スポーツセンター以外にも、人工芝グラウンドとテニスコートを有する「調布グラウンド」があり、スクール活動と三菱関係者向けの施設貸出しを行っています。加えて、埼玉県戸田市に「戸田艇庫」も有しています。

グラウンドで満面の笑顔の上原理事長。サッカーや水泳、体操など、この地から誕生したトップアスリートも多い。

――読者へのメッセージをお願いします。

上原巣鴨スポーツセンターがオープンしたのは、1975年10月10日。おかげさまで、本年、2025年をもちまして、50周年を迎えます。
活動の根底にあるのは、岩崎小彌太初代会長の「養和の心」を重んじる設立以来の精神です。三菱養和会は、今後もその精神を旨とし、スポーツの普及振興のために尽力していきます。小さなお子様からシニア世代まで、我々はスポーツの楽しさや素晴らしさを伝えて、こころと体の健康という価値を日々提供しています。また、三菱養和会を通じて、岩崎彌太郎、彌之助、久彌、小彌太の三菱歴代社長を思い起こす機会になればと思っています。肌感覚で触れられる三菱ならではの精神のバックグラウンドがどこかに必ずあるはずです。
スポーツが好きな方はもちろん、スポーツが苦手な方、あるいはこれからスポーツを始めたい方など、皆さま方のスポーツを通じた心身のリフレッシュ、健康づくりや仲間づくりの機会として、ぜひお気軽に施設をご利用ください。巣鴨の街はアフタースポーツも充実しています(笑)。皆さまのご来訪をお待ちしております。


【施設概要】

所在地:〒170-0002 東京都豊島区巣鴨2-8-1
受付時間:月~金曜日 10:00~20:00(12:30〜13:30を除く)
土曜日 10:00~19:00
日曜日・祝日 10:00~17:00
休館日:毎月末日 夏期8月12日〜17日 年末年始12月29日〜1月4日
アクセス:JR山手線 巣鴨駅北口より 徒歩約2分
都営三田線  巣鴨駅A4出口より 徒歩約2分
公式URL:公益財団法人三菱養和会

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