ライフスタイル企画

2025.01.16

本を読めば「今」が見えてくる――BOOK REVIEW Vol.16

読んで開運!?
2025年の運気を上げる3冊

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新しい年が始まった。多くの人が初詣に出かけたことだろう。年の初めに気のよい寺社仏閣を訪れ、一年の計を誓うのは素晴らしいこと。しかし神頼みだけに頼っていいのだろうか? 今回はさらに一歩、自力で運を上げるためのヒントとなる3冊をセレクトした。これらの本を心のお守りとして、強運な一年を。

運を強くする潜在能力の鍛え方

運を強くする潜在能力の鍛え方
林 成之著 致知出版社(1,650円)

運を上げるにはどうすればよいのか? 信心を深くする? 徳を積む? 効率よく開運を目指そうとしても、そう簡単には結果につながらないものだ。そんななか、本書の著者は「運は潜在能力」であるといい、その潜在能力を引き出すには脳の使い方にコツがあるという。これは期待できそうだ。
脳外科医として、マイアミ大学や日本大学の救命救急センターにて命の瀬戸際で想像を超えるような潜在能力を発揮する人を数々見てきた経験、そして脳科学をスポーツに応用し、競泳の北島 康介選手や、女子サッカー、女子カーリング、女子卓球などの日本代表チームの急成長を支えてきた経験から、ここ一番というときの勝負強さ=潜在能力を発揮できる脳の使い方について考察。
3章に分かれていて、第1章では自身の経験や救命医としての経験を軸に、第2章ではスポーツ選手達の潜在能力の発揮法を、そして第3章では子どもが人から好かれ運がよくなるための親のふるまい方について紹介。もちろんどの章もオフィスで働く毎日の暮らしの中でもちゃんと役立つ。特に最終章は独身やDINKSの人でも、上司や部下、パートナーとの接し方のヒントが満載で、明日から人間関係が改善し、相手も潜在能力を発揮できるはず。帯に書かれているところから少しネタバレすると、「否定語を使わない」「頼まれたら2秒以内に行動」「考えをひとつに絞って勝負する」など、心がけひとつで実践できそうなことも多い。さあ、自らの手で運を開こう。

運とお金を引き寄せる片づけ

運とお金を引き寄せる片づけ
広沢 かつみ著 清流出版(1,650円)

もっと具体的・直接的に、運を引き寄せるアクションをしたいならこちらがおすすめ。「片づけ」で運をつかむ方法だ。片づけで開運とは、耳にタコができるほど聞いてきたけれど面倒くさい…という人こそ本書を手にとってほしい。リフォーム雑誌の編集長を経て、2,000件以上の片づけや収納のアドバイスを行ってきた著者の提案は、現実的で丁寧で理論的。今のあなたの家が散らかり重症度でどのレベルかをセルフチェックする方法に始まり、リビング、ダイニング、キッチン…と順に、「何を、どんな基準で整理するか」をこと細かに指示してくれる。まるで一緒に掃除をしているようだ。文中に「気の流れ」といった言葉もでてくるが、自分はスピリチュアルなことは分からないとはっきり書いてあり、著者の説明は科学的な整合性を感じさせるものばかり。
また3章までで部屋の片づけは終わるが、第4章、5章の心の整理の仕方の紹介も秀逸。前半で部屋の片づけで身についた意識のまま、さくっと執着を捨てて心を整えられそうなのだ。 “運を良くするためには、「身の回りを整え、体調を整え、生活を整え、感情を整えておく」こと”。あまりにも当たり前なのに多くの人がおろそかにしているこのことの大切さを、しっかりと心に刻みつけ、行動を促してくれる一冊だ。

愛ちゃんのモテる人生

愛ちゃんのモテる人生
宇井 彩野著 河出書房新社(1,848円)

幸運とは、結局自分次第。起きた出来事をどのように捉え、どう向き合い、いかに対処するか。自分自身や、身の回りの人に対して、どんな接し方をするか。そのアンサーのような物語がこちら。著者デビュー作にして氷室冴子青春文学賞第五回大賞受賞作だ。
オープンゲイの愛ちゃんが失恋をきっかけに始めた動画配信――表紙のキャッチーなイラストとこの設定にステレオタイプなエンタメ感を想像してしまうが、その予想はいい意味で裏切られる。愛ちゃんのママ麻紀さんはシングルマザーの漫画家、隣に住む5歳年下の代議士の息子太良くんは有名私立小学校に通っていたときからネグレクトされている。太良くんの実母は離婚して家を去り、その後再婚した母はふたりの子どもを産んだけれど…これだけ聞くとみんな、いわゆる「幸運」な星の下とは言えない。愛ちゃん自身もゲイとして「黒歴史」と片付けることは許されない辛い経験もあった。けれど彼らは自分を不運とは感じていないし、読めば読むほど、むしろうらやましいくらい、こちらから見ても幸せに映るのだ。それはなぜだろう? その視点で読んでみると、彼らの「運」の秘密が見えてくる。
タイトルに戻り「モテる人生」について考える。愛される人生を生きるためには何が大切なのか、愛ちゃんからヒントを学ぼう。

ライタープロフィール

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文/吉野ユリ子
1972年生まれ。企画制作会社・出版社を経てフリー。書評のほか、インタビュー、ライフスタイル、ウェルネスなどをテーマに雑誌やウェブ、広告、書籍などにて編集・執筆を行う。趣味はトライアスロン、朗読、物件探し。

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