拠点訪問

2024.05.23

三菱ケミカルグループ

福岡県北九州市

北九州工業地帯にある広大な工場と従業員のあたたかさ、
そして地域からの愛され力が自慢の事業所

化学を基盤とした革新的なソリューションで、生活や社会を支える製品やサービスを提供し、人と社会、そして地球の心地よさが続いていく「KAITEKI」の実現をリードしていく三菱ケミカルグループ。今回訪問した福岡県北九州市の「九州事業所 福岡地区」は、事業会社にあたる三菱ケミカルが昭和10(1935)年に創業した、長い歴史を持つ工場だ。敷地は約186万平方メートル、みずほPayPayドーム福岡約22個分と広大で、グループ会社も含め約2,600人が働いている。

時代に合わせて扱う製品は移り変わってきた。近年は半導体関連部材や精密実装材料などの高機能製品を多く手掛ける。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミー推進において重要な製品も多い。再生可能な植物由来の原料を用いる工業用プラスチック「DURABIO™(デュラビオ™)」は意匠性、耐衝撃性ほか高機能面からもひっぱりだこだ。自動車のヘッドランプにも使われるポリカーボネート樹脂は、ケミカルリサイクル(原料のモノマー状態まで戻して再度重合し、ポリカーボネート樹脂を製造)のための実証設備が稼働している。 また、食品分野の新設備もこの3月より稼働し始めた。水分と油分を均一に混合させる乳化剤シュガーエステルは、缶コーヒーやケーキなどで使用される身近な製品だ。世界需要の高まりによって、既存の東海事業所に加え、九州事業所に増設した。

地域との交流も盛ん。敷地内のグラウンドでは地元Jリーグサッカーチーム「ギラヴァンツ北九州」と提携し、サッカー教室を開催。Vリーグ女子チーム「カノアラウレアーズ福岡」との提携もスタートした。毎年恒例の「黒崎感謝祭」では、敷地を市民に無料開放し、飲食・ゲームエリアなどを設け、工場見学ツアーを開催し子ども達も多く訪れる。

スポーツ活動がさかんで充実

クロアチア出身の品質保証部 品質保証1グループのマテア ヴェチェリチさんは、半導体業界用高機能薬品の品質保証を担当。顧客要求事項が厳しく定められており、新たなしくみが随時追加されるため、順次教育を受けながら最新の要求を達成できるよう日々努力を重ねている。もともとは日本に特別関心が高かったわけではないが、2016年から1年間、三菱ケミカルの研修プログラムに参加したことで「日本で働きたい」という思いが高まり、2019年に再来日して入社した。研修時から北九州が気に入り、入社時もこの事業所を希望。

「ここのコミュニティが好きなんです。体育館でいろいろなスポーツ行事があるところもいい。もともとバレーボールをしていたので、バレーボール班に参加しています。仕事はもちろん、それ以外の活動にも満足しています」(ヴェチェリチさん)

設備技術部 電計2グループの河島 慎吾さんは「工場のお医者さん」。
プラント機器の異常に対して、音を聞いたり、触ったり、測定器を使い、培った技術や過去データ等を用いて診断し対処する。河島さんはサッカーとバスケ班に参加。

「スポーツ大会を通してのつながりもありますし、この事業所は黒崎駅が近く、公共交通機関で通勤している人が多いので飲んで帰る文化があり、そこでのつながりも社内・社外・タテ・ヨコ問わず多い。工事を依頼している工事業者さんに会うと『久しぶりですね、ちょっと一杯だけ』と行って、一杯で終わらないことも(笑)」(河島さん)

ものづくりの現場はコミュニケーション力が大切

ポリカーボネート研究開発室 材料開発グループの竪山 聖さんは、スマートフォンの画面など、ディスプレイに使われるフィルムの特殊な材料を開発。横浜にある研究所「Science & Innovation Center」と協力しながら、テーマを進めている。神奈川育ちのため、当初は横浜勤務を希望していたというが、今ではすっかり北九州に愛着を感じている。

「今開発している材料はこの事業所内のグループ会社で製造しているので、ものづくりの現場をすぐに見ることができ学べることが多い」(竪山さん)

企画管理部 生産技術・DXグループの吉川 廉さんは、九州事業所の既存プラントの増産対応を行う。新たなプラントの建設に向けて、基本設計をはじめ、コストダウンや運転負荷低減などを検討し、より進化したプラントを建設すべくチーム一丸となって取り組む。

「設計する上で、もちろん理論も大切ですが、机上だけで考えるのではなく、現場に足を運び、運転している方々の声に耳を傾けるよう心がけています。また業務上、さまざまな 部署と連携しますが、皆さん協力的で前向きなので、とても仕事がやりやすいです」(吉川さん)

製造2部 樹脂課の安藤 寿美さんも事業所内のコミュニケーションのよさを実感している一人。安藤さんは、プラントの安全・安定運転の継続と、生産性・品質の向上に関する検討を行う。生産において不具合が出た場合は、現場のさまざまな情報を集めて原因を調べる。

「経験豊富な人の助けとともに乗り越えられています。私が困っていると違う部署の人でも心配してくれたり、『がんばっているね』と声をかけてくれたりしてあたたかい。本当に周りの方に恵まれていると思いますね」(安藤さん)

土台を支える人々の熱い思いが地域へと伝わっていく

製造1部 水処理・ガス課の園本 千沙さんは、製造や開発において排出される排水中の有機物を、微生物や菌を用いた「生物処理法」で分解・除去し、公共の水域に放流できるように管理している。もともとは派遣社員として庶務を担当していたが、水処理に関心を持ち、周囲の助けも借りながら勉強。キャリア採用の形で正式に2023年7月に入社となった。

「事業所内の排水を一元管理しています。実際に何かを製造している部署ではありませんが、縁の下の力持ちとして九州事業所のものづくりを支えています。様々な条件が変化する中でも毎日安全・安定運転を維持することがやりがいであり、責任だと感じています」(園本さん)

環境安全部 環境・安全企画グループの橋本 和久さんは、各部署の安全担当者や新人に対して、安全に関する知識や技能のレベルアップのために教育を行っている。

「製造の現場で30年近く勤務してきました。中央労働災害防止協会が提唱する『一人ひとりカケガエノナイひと』という人間尊重の理念に基づき、従業員の誰一人、事故に遭うことがないよう、みんなでカバーし合う、化学工場で働くためには欠かせない意識を根づかせることに尽力しています。この事業所は街が近いこともあり、従業員だけでなく地域の皆さまに対しても安全は基本中の基本で最も重要。安全な職場だからこそ新たな発想、製品を生み出せます」

事業所内にある赤白の煙突3本のうち1本が2021年に撤去された際は「まちのシンボルよ、さようなら」と地域住民が惜しんだ。従業員に愛され、地域に愛されながら、九州事業所 福岡地区は今日もKAITEKIを目指す。

マテア ヴェチェリチ
VECERIC MATEA
品質保証部 品質保証1グループ

河島 慎吾
SHINGO KAWASHIMA
設備技術部 電計2グループ

竪山 聖
SATORU TATEYAMA
ポリカーボネート研究開発室 材料開発グループ

吉川 廉
REN KIKKAWA
企画管理部 生産技術・DXグループ

園本 千沙
CHISA SONOMOTO
製造1部 水処理・ガス課

安藤 寿美
KOTOMI ANDO
製造2部 樹脂課

橋本 和久
KAZUHISA HASHIMOTO
環境安全部 環境・安全企画グループ

写真/谷本結利

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