
もう今にも溶けてしまいそうなほど、この夏はとにかく暑い。週末を迎えても、外に出る気力すら奪うほどの猛暑だ。誰もがうんざりし、太陽を恨めしく思ってしまうのも無理はない。だが不思議なもので、夏の終わりが近いと気づけば、一抹の寂しさややり残したことがあるのでは…という焦燥感を覚えるのも事実。今夏の思い出作りがまだならば、さぁどこへ出かけよう?
暑さから逃れられる場所として、提案したいのが“天空”だ。地上から離れた高所に降り立ち、澄んだ空気に身を委ねる。天然のクーラーの心地よさはもちろん、どこまでも広がる空と色づく大自然、360度の大パノラマが暑さに疲れた私たちをきっと癒してくれるはずだ。
【岩手県】標高1,300mへの空中散歩!網張温泉『天空のリフト』
岩手山の旧火口から湧き出す掛け流しの名湯、網張温泉。1,300年の歴史を持ち、古くから万病に効くと伝わる。「休暇村岩手網張温泉」はそんな古湯を楽しめるマウンテンホテルだ。
岩手山麓、十和田八幡平国立公園内というロケーションもあり、ここからの眺めはあの宮沢賢治が愛した理想郷「イーハトーヴ」の原風景とも言われているとか。

そんな美しい景色を満喫できるアクティビティは、キャンプ、登山、スキーなどシーズンを通して多彩だが、夏から秋までの期間限定で楽しめるのが「天空のリフト」だ。

空中散歩の第一歩、第1リフトの終点は、「天空の丘」。370m、約5分の空旅のあとは、設置されている「天空のベンチ」や撮影用のスマホスタンドを利用して記念写真を撮ろう。条件がそろえば、早朝に雲海が見られることもあるそう。

さらなる絶景を求めるなら、第2リフト(約15分・1,080m)、第3リフト(約10分・700m)と乗り継ぎ、犬倉山頂を目指したい。第3リフトの終点から10分ほど歩くと犬倉展望台があり、そこから眺める雫石盆地は絶景のひと言。また、網張温泉の元湯から吹き上がる水蒸気も見ることができる。紅葉に色づく秋もまた美しい。

展望台から30分ほど、さらに登れば標高1,408mの犬倉山頂に到着。秋田駒ケ岳、笊森山、乳頭山の山々の眺めと通り抜ける風が体を優しく労ってくれる。

もちろん、帰りは“下りのリフト”に。スキーシーズンには味わえない経験もまた貴重。山を降りた後は、日帰り入浴専用の温泉施設「薬師の湯」で汗を流せば、身も心もさっぱり。リフレッシュして帰路につけること確実だ。
網張温泉『天空のリフト』
〒020-0585 岩手県岩手郡雫石町網張温泉
☎︎ 019・693・2211
運行期間:2024年11月4日(月祝)まで ※リフトの3基運行は土日祝日のみ。8月25日まで。9月以降は第一リフト(天空の丘行き)のみ運行
運行時間:天空の丘行き6時30分〜9時30分、犬倉山頂行き6時30分〜17時
料金:大人往復1,000円(1本)、1,500円(2本乗り継ぎ)、2,000円(3本乗り継ぎ)/小学生往復600円(1本)、800円(2本乗り継ぎ)、1,000円(3本乗り継ぎ)
【三重県】伊勢と鳥羽を結ぶ天空のドライブウェイ『伊勢志摩スカイライン』
1964年に開通した『伊勢志摩スカイライン』。伊勢神宮の内宮方面から標高555mの朝熊山を横断し、近鉄・鳥羽駅方面へと続く16.3kmのドライブウェイは、車中から眺める絶景はもちろん、道中にいくつもビュースポットが点在。
走って、止まって眺めて、食べて、を楽しめるドライブウェイだ。

写真提供:©︎伊勢志摩観光コンベンション機構
中でも360度のパノラマが広がり、伊勢志摩の全景を見ることができる山頂広場は、爽快感あふれるフォトスポットの宝庫。Instagramのハッシュタグ「#天空のポスト」で知られるレトロなポストがあるのもここだ。

山頂の売店で無料で貸し出している「空飛ぶほうき」にまたがり、シャッターが押されるタイミングでジャンプ! すると、まるで空を飛んでいるような“映え写真”が完成。人気アニメの主人公を彷彿とさせると話題だ。

写真提供:©︎伊勢志摩観光コンベンション機構
また、大パノラマが眼科に広がる展望足湯も人気のスポット。大人100円、子供50円を備え付けの料金箱に投函すれば、誰でもすぐに利用できる。
他にも、伊勢名物「伊勢うどん」や濃厚なバニラミルク味が絶品の「天空ソフトクリーム」を味わえる食事処「朝熊茶屋」にも立ち寄らずには帰れない。

写真提供:©︎伊勢志摩観光コンベンション機構
サンセットタイムには、ロマンチックな雰囲気に包まれ、ここでもまた最高の1枚が撮れるはずだ。広大な伊勢平野と大小の島々が浮かぶ真珠の海を見ながら、暑さから逃れるひとときのドライブを楽しもう。
『伊勢志摩スカイライン』
〒516-0023 三重県伊勢市宇治館町677-1(伊勢料金所)
開催日:2024年8月8日(木)
営業時間:7時〜19時(1月〜7月、 9月〜12月)、7時〜20時(8月)
通行料金:軽・小型・普通自動車1,270円
【香川県】人口たった約20人の小さな島の手作りのビュースポット『楠の倉展望台』
高松空港から車で約50分。香川県の西に位置する町、三豊といえば、“日本のウユニ塩湖”と称されるフォトスポット、父母ヶ浜が有名だ。
だが実は、そこから船で揺られること約20分。瀬戸内海に浮かぶ小さな島に、清涼感たっぷりの絶景が望める展望台があることを知る人は少ない。

写真提供:(公社)香川県観光協会
周囲3.8km、島民の数は約20人という志々島は、かつて花卉業が盛んで“花の島”と呼ばれていたとか。現在は島に住むおばあちゃんと、その息子夫婦の手によって作られた「天空の花畑」がその面影を残し、春になるとナデシコ、芝桜、キンセンカが咲き誇る。

写真提供:(公社)香川県観光協会
見どころはそれだけではない。香川県の天然記念物にも指定されている島のシンボル、樹齢1,200年以上の大楠は、壮大なスケールで観る者を圧倒。
幹周り約12m、高さ約23mと縦横無尽に力強く伸びるその全貌は、フレームに収めようと思っても不可能。潔く諦め、その生命力みなぎる姿を目一杯まぶたに焼きつけるのが正解だ。

写真提供:(公社)香川県観光協会
では、清涼感あふれるフォトスポットはどこかというと、それは島の中腹に位置する「楠の倉展望台」だ。
温もりあふれる小さな小屋の中で椅子に座り、空と海と溶け合うように浮かぶ島々や、穏やかな瀬戸内海をただぼーっと眺めれば、抱えていた悩みがするすると消えていくのを実感するはずだ。
暑さを忘れる島旅デトックスが叶う場所だ。
『楠の倉展望台』
〒769-1109 香川県三豊市詫間町志々島
アクセス:志々島港から徒歩約20分
構成・文/一寸木芳枝