ライフスタイル企画

2024.05.30

旅企画「目的旅のススメ」

いつもとは視点を変えて。
風が心地いい、初夏の船旅

写真提供:東京都観光汽船(株)

旅先へと向かう道中を、ただの移動時間ととらえるか、ひとつのアクティビティとして楽しむか。交通手段に何を選ぶかは、旅のプランニングを大きく左右する。飛行機、車、電車、そして船。どれもそれぞれによさがあるが、近年、人気が高まっているのが船旅だ。船旅と聞くと、お金と時間に余裕のあるシニア層が楽しむクルーズ船を思い浮かべるかもしれないが、日本には個性あふれる船が各地にあり、ほんの数十分から半日ほどのショートトリップまで、多彩な船旅が楽しめる。見慣れた街も、初めて訪れる街も、船から眺めるだけで、きっと新しい発見があるはずだ。また、初夏の心地よい海風に身を委ね、きらめく水面を眺めるだけでも、リフレッシュ効果は抜群。新たな旅の選択肢に、船旅を加えてみてはいかがだろう。

流線形のボディはまるで宇宙船! 大都会を泳ぐ水上バス。東京都『ホタルナ』

どこか異世界からやってきたのかのような、シルバーメタリックの流線形ボディ。隅田川を滑るように進むこの船を、見たことがある人も多いだろう。

この一度見たら忘れられない近未来的なデザインの船の正体は、TOKYO CRUISE(東京都観光汽船)が運航する水上バス『ホタルナ』。

写真提供:東京都観光汽船(株)

あの『銀河鉄道999』の作者、松本 零士氏が宇宙船をイメージしてデザインを手掛けたということもあり、この船に乗るために日本を訪れる外国人観光客もいるほど。

船内には『銀河鉄道999』のキャストによる観光案内が流れるほか、ガルウィングの扉、屋上デッキ、船内側面や天井のアーチ上の窓ガラスなど、細部のディテールにも松本氏の美学が息づく。

就航は2012年6月。2004年に就航した同じく松本 零士氏プロデュースの『ヒミコ』に続く2船目としてデビュー。

名前の由来は、“ホタル”と“ルナ(月の女神)”。
「月が輝く夜に神秘的な輝きを放つ蛍が墨田川を舞う」イメージから、“ホタル”と“ルナ(月の女神)”、2つの言葉を合わせた造語として松本氏自ら命名した。

写真提供:東京都観光汽船(株)

全長40メートル、全幅9メートル、167トン、定員は約120人。運航ルートは日の出から浅草、もしくはお台場から浅草を結ぶ。

浅草から乗船すると、蔵前橋、両国橋、永代橋を順にくぐり、勝鬨橋を過ぎると屋上デッキが開放される。

写真提供:東京都観光汽船(株)

クライマックスはやはりレインボーブリッジ。デッキ上がって、お台場や湾岸の近未来的な街並みを眺めながら、レインボーブリッジを下から見上げる体験は、東京に暮らす者にとっても新鮮。

春限定のお花見周遊船など、イベントクルーズもあり、いろんな使い方ができるのも魅力だ。

東京の新しい楽しみ方としてブックマークしておきたい。

『TOKYO CRUISE ホタルナ』

乗り場:
【浅草】〒111-0033 東京都台東区花川戸1-1-1
【日の出桟橋】〒105-0022 東京都港区海岸2-7-104
【お台場海浜公園】〒135-0064 東京都港区台場1-4-1

料金(片道):浅草発-日の出桟橋¥1,400(約40分)、浅草発-お台場海浜公園2,000(約65分)/日の出桟橋発-浅草¥1,400(約40分)、日の出桟橋発-お台場海浜公園¥1,000(約20分)/お台場海浜公園発-浅草¥2,000(約50〜60分)、お台場海浜公園発-日の出桟橋¥1,000(約20分)

風光明媚な三陸の景色をのんびり眺める、岩手県『宮古うみねこ丸』

日本近海に繁殖地をもつ渡り鳥、ウミネコ。飛ぶと尾に黒い帯が見えることから、英語では「Black-tailed Gull」、“黒い尾のカモメ”と呼ばれ、昔から人々に愛されている海のマスコット。

そのウミネコのように多くの人々に笑顔を届け、繋げてきた思い出や、宮古市の象徴として希望を乗せて羽ばたいていく。

そんな思いが込められた船が岩手県宮古市にある。

それが『宮古うみねこ丸』だ。

2021年1月。58年に渡り運航してきた「浄土ヶ浜遊覧船」がその歴史に幕を下ろしたが、多くの市民から終了を惜しむ声が寄せられ、新しい遊覧船の建造が決定。

2022年7月に『宮古うみねこ丸』として生まれ変わった。

出崎ふ頭、浄土ヶ浜間を約30分で周遊する遊覧船の目玉は、宮古の代表的な景勝地、浄土ヶ浜をはじめとした三陸復興国立公園・三陸ジオパークの景色だ。

遊覧船からしか見ることができない海岸から突き出た巨大なローソク岩をはじめ、鋭くとがった白い流紋岩がそそり立つ光景は圧巻。

特等席は、松の緑と岩肌の白、海の群青が織りなす大パノラマを楽しめる前方の視界が開けた2階のデッキ席。やわらかな潮風が心地よく、ゆっくり、のんびりした時間が流れる。

ちなみに、その名前の由来ともなっているウミネコが船を追いかけてやってくる理由は、餌付け体験(別途有料)を行っているから。美しい景色とウミネコを一緒に撮影できる絶好のチャンスだけに、トライしてみるのも一興だ。

下船後は、宮古市のシンボルカラー、「浄土ヶ浜エターナルグリーン」が白い船体に美しく映えたフォトジェニックな船と一緒に撮影するのもお忘れなく。

やわらかな曲線は、人々の想いが輪となり線となり、未来へと伸びていく様をイメージしているとか。

人々の想いをのせた自然の芸術をめぐる三陸海岸クルージング。岩手を訪れた際はぜひ。

『宮古うみねこ丸』

乗り場:
【出崎ふ頭】〒027-0004 岩手県宮古市臨港通
【浄土ヶ浜桟橋】〒027-0001 岩手県宮古市日立浜町32-4

料金(片道):湾内周遊(約30分)¥1,500、水上交通(片道約7分)¥500

フェリー新時代到来!
大阪-別府間を約12時間で結ぶ『さんふらわあ くれない・むらさき』

『さんふらわあ くれない・むらさき』は2023年1月と4月に就航したばかりの日本初のLNG燃料フェリー。

下りは大阪を夜出発し、別府に翌早朝に到着する。通常であれば、“ただ寝て過ごす”のが夜間フェリーの定石だが、『さんふらわあ くれない・むらさき』の場合は、それがもったいないと思ってしまうに違いない。

なぜなら、船内には無料で利用できる展望大浴場をはじめ、毎晩プロジェクションマッピングの映像が投影される三層吹き抜けのアトリウムの大階段、瀬戸内海の夜景を大きな丸窓から望めるプロムナードなど、見どころがたっぷりあるからだ。

客室タイプも20種類以上とバリエーション豊かで、移動時間を快適な旅に変えてくれる。

また、旅の楽しみのひとつでもある食事も、大阪-別府航路ではオーシャンビューのレストランで、瀬戸内航路にちなんだ食材や郷土料理を味わえるというからすごい。

それもビュッフェスタイルなので、好きなものを好きなだけ楽しめる。

もちろん、船旅の醍醐味である景色もダイナミック。出航後、約1時間で明石海峡大橋を通過。漆黒の海と空の中、ライトアップされた橋が幻想的に美しく輝く姿は必見だ。

展望浴場は夜だけでなく朝も営業。夜景を眺めながらもいいが、夜が明けるタイミングで入る朝風呂は格別。煌めく水面を眺めながらのバスタイムは至福の時間だ。

豪華客船に乗らずとも、リッチで優雅な気分をもたらしてくれる新時代のフェリー。これからの旅のトレンドになりそうだ。

『さんふらわあ くれない・むらさき』

乗り場:
〒559-0034 大阪府大阪市住之江区南港北2-1-10 ATC.ITM棟2F 2-D-6
☎︎ 0120・56・3268
料金:大人1名片道運賃¥12,990〜(4月〜6月料金)

構成・文/一寸木芳枝

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