三菱の歴史

2024.05.30

漫画「千年くすのき」彌太郎編

第9話 母・美和

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千年くすのき プロフィール

原作:成田 誠一(なりた・せいいち)
『マンスリーみつびし』冊子時代に連載していた歴史エッセイ『千年くすのき』著者。本連載はこのコラムの漫画化。

漫画原作:星井 博文(ほしい・ひろぶみ)
漫画原作者、漫画家。『まんがでわかる 伝え方が9割』(ダイヤモンド社)など経済から歴史ものまで著書多数。「なんでもマンガにしちゃう男」

@hoshiihirofumi(X、旧twitter)


漫画作画:上川 敦志(かみかわ・あつし)
漫画家。小学館「少年サンデー」などで活躍。同社の学習まんがシリーズでも著書多数。『小学館版 学習まんが人物館 スティーブ・ジョブズ』(小学館)など。実は女性。


題字:藤田 紅子(ふじた・こうし)
書道家。毎日書道会審査会員、南不乗発会、現日会副会長、高知現日会長、安芸全国書展審査会員。安芸全国高校生書展審査員。

母、美和から彌太郎や彌之助へ受け継がれた「岩崎家の家訓」。
「岩崎開き」と言われる新田開発や「伊尾木洞」を愛した牧野富太郎への支援の原点がここに

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岩崎彌太郎の故郷、高知県安芸市。母なる大地とともに偉大な母に薫陶を受けて育った彌太郎。「人は天の道にそむかないこと」をはじめとする家訓は、若き心に熱く刻み込まれたに違いありません。
立身出世の代表のように語られる存在ですが、故郷や人に力を貸すことを惜しまない人であったことも忘れてはなりません。安芸市にはそれを感じられる場所がふたつありました。

ひとつめは「岩崎開き」、いわさきびらきと読みます。
安芸川沿いの田畑に今も残るその場所へ行ってみました。

「岩崎開き」へ向かう安芸市の長閑な道

安芸市を流れる安芸川。右は川、左は田んぼののどかな道。一見、何もなさそうに見えますが、はてどこにその「岩崎開き」が?

「岩崎開き」の石垣の跡

ありました。川岸寄りの道沿いに草木に覆われた石垣の跡。数々の水害から村人を守り、救った堤なのだそうです。

「郷士の家格を回復した後、27歳で結婚し、井ノ口村へ帰っていた彌太郎。安芸川の両岸にはまだ開拓されていない荒廃地があった。度々の洪水で荒らされるので、川のほとりの低いところに堤を築いて田を開く許可を得た。
その後、岩崎家一家総出で新田一町歩(1万平方メートル)を開き、別に綿作地を作り五反(5,000平方メートル)を植え付けた。難工事であったが、この堤により村はその後、水害を免れたという。
土地は戦後、人手に渡ってしまったが、その際に築いた堤の痕跡が現在も残っている」 (『岩崎彌太郎伝上巻』1967年 岩崎彌太郎・岩崎彌之助伝記編纂会より)

雑草に覆われる「岩崎開き」の石垣の跡

だいぶ雑草に覆われており、かなり気をつけて探さないとそれと気づかないほどですが、確かに堤の石垣を見ることができました。
目を転じれば、青々と風にそよぐ稲と水田に映る青空。この豊かな田園風景は、彌太郎が築いた堤により守られ、続いてきたものなのですね。

豊かな田園風景

さて、それではもう一箇所、彌之助の尽力の恩恵を受けた場所へ。
「伊尾木洞」いおきどう、と読みます。

伊尾木洞

おや、この光景どこかで見たような、と思ったあなた。朝ドラ視聴者ですね。そう、2023年前半に放映されたNHK朝の連続テレビ小説『らんまん』のオープニング映像に登場したのがこの伊尾木洞なのです。植物学者、牧野富太郎さんがこよなく愛した天然の洞窟には、たくさんのシダ植物が生息し、度々採集に訪れたのだとか。
それでは伊尾木洞、入ってみましょう。

伊尾木洞入り口

伊尾木洞入り口です。この洞窟は、安芸市に面した太平洋からの波により浸食されてできた天然の洞窟。高さ約5m幅約4m、全長はおよそ40mほど。
普段は足を浸すくらいの水が流れています。伊尾木洞観光案内所では無料で長靴を貸し出しているのでぜひ利用しましょう。
WEB申込みのガイドツアーも開催しているので安芸市観光協会のHPをチェックしてみてください。通常コース60分と、冒険コース90分があるそうで、冒険コースは400mの奥まで行けるようです。一週間前までの申込みなのでご注意を。

海に堆積された約300万年前の地層が隆起し、波によって削られてできた“海食洞”

さあ中に入ってみましょう。左側に歩道のようなスペースがありますが足元には気をつけて。海に堆積された約300万年前の地層が隆起し、波によって削られてできた“海食洞”といわれるもの。地層の美しさにも注目しながら進みましょう。

広大な空間の洞窟内

思った以上に広大な空間なのがお分かりになるでしょうか。洞窟を抜けて光の差す方角へまっすぐ進んでみましょう。

ジブリを思わせる様な神秘的な光景

ジブリ・・・?と思わずつぶやいてしまうような空間。上空から光が差し込み、川面や苔、シダがキラキラ光ってとても神秘的な光景です。左右が切り立った崖になっており、40種類以上のシダ植物が生息し、苔や地層、貝の化石などと幻想的な世界をつくりだしています。

生い茂るシダ植物①
生い茂るシダ植物②

これほど多くのシダ植物が一箇所に生息するのは大変珍しいそうで、1926年にこれらすべてのシダ植物が国の天然記念物に指定されています。
牧野富太郎さんはこの場所をこよなく愛し、何度も通ったとのこと。その牧野富太郎を支援したのが彌之助。志ある人物や事業には惜しみなく力を貸す。そんな彌之助の温かな手のぬくもりが感じられるようです。

安芸市へお出かけの際は、彌太郎生家と併せて、ぜひ訪れてみてほしい場所です。

伊尾木洞

伊尾木洞
安芸市伊尾木117
安芸観光情報センター
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