みにきて! みつびし

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2014年竣工のビルでかつての水運の町へタイムスリップ

三菱倉庫・江戸橋歴史展示ギャラリー

施設DATA

  • 施設名:三菱倉庫・江戸橋歴史展示ギャラリー
  • 所在地:東京都中央区日本橋1-19-1
  • 開館日:月〜土曜日(祝日・年末年始等を除く)
  • 開館時間:平日/7:30〜19:30、土曜/7:30〜13:30
  • 入館料:無料
  • お問い合わせ:03-3278-6611
  • ショールーム・ギャラリー

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こんにちは! 事務局のカラットです。海運から始まった三菱にとって、物流はもっとも歴史の古い業種といえます。今回は1887年から物流業を営み、東京・日本橋で首都の近代化とともに発展を続けてきた三菱倉庫の「江戸橋歴史展示ギャラリー」におじゃましました。

三菱グループと関わりの深い街といえば丸の内(東京都千代田区)。三菱グループ企業の多くがこの地に本社を構えています。そんな中、グループの中でも歴史の長い会社のひとつである三菱倉庫の本社は、丸の内から少し離れた日本橋(東京都中央区)にあります。三菱倉庫が、日本橋で事業を営むようになって、約130年。日本橋は、三菱創業者岩崎彌太郎が1876(明治9)年に倉庫業を始めた場所でもあり、三菱倉庫とのゆかりが深い街です。

三菱倉庫の本店がある「日本橋ダイヤビルディング」は2014年9月に竣工。ビルのオープンとともに1階のエントランスホールに開設・公開されたのが「江戸橋歴史展示ギャラリー」です。中央区では、「中央区まちかど展示館 」と題して区内の多様な文化資産の紹介を進めており、江戸橋歴史展示ギャラリーもそのひとつに登録されています。ここでは町の歴史、倉庫業のなりたち、三菱倉庫の歴史を知ることができます。

2014年9月に竣工した三菱倉庫のオフィスビル「日本橋ダイヤビルディング」1階の一角に設置されたギャラリー。だれでも自由に見学できる。
2014年9月に竣工した三菱倉庫のオフィスビル「日本橋ダイヤビルディング」1階の一角に設置されたギャラリー。だれでも自由に見学できる。

東京・日本橋というと金融街や老舗デパートを連想される方も多いかもしれませんが、歴史をさかのぼると日本橋は、もともと水運(船運)の盛んな町でした。日本橋川、その先は東京湾へと流れる隅田川が流れ、東京湾から艀(はしけ)で運ばれてきた荷物はこの地で川沿いの倉庫に荷揚げされていました。三菱倉庫のお隣に立つ日本橋郵便局が日本における郵便発祥の地であることも、ここが物流の要所であったことを示しています(ちなみに日本近代郵便の父と呼ばれる前島密は、大久保利通に建言して当時の三菱商会を支援した人物でもあります)。

三代目歌川広重「江戸橋三菱の荷蔵」(郵政博物館提供)。現在の江戸橋と倉庫の位置関係が違うのは、昭和通りができたときに江戸橋が架け替えられたため。
三代目歌川広重「江戸橋三菱の荷蔵」(郵政博物館提供)。現在の江戸橋と倉庫の位置関係が違うのは、昭和通りができたときに江戸橋が架け替えられたため。

今、三菱倉庫の本店がある江戸橋のたもとでは、かつて郵便汽船三菱会社が荷捌き場を設け、船荷を扱っていました。三菱会社は輸送貨物を担保とする荷為替金融を考案して三菱為替店を設立し、貨物を預かることを目的として金融業の傍らで倉庫業を開始しました。これが三菱倉庫の源流です。1880年にはレンガ造りの倉庫群(通称「七つ蔵」)がこの地に建てられ、その姿は三代目歌川広重の版画「江戸橋三菱の荷蔵」にも残されています。

三菱倉庫は、1887年、東京・深川で有限責任東京倉庫会社として創業し、1918年には商号も現在の三菱倉庫株式会社となって成長を続けていましたが、1923年に関東大震災が発生。日本郵船とともに使用していた七つ蔵は火災で焼失してしまいました。三菱倉庫は、この地震で、七つ蔵をはじめ、東京、横浜で運営していた倉庫の9割以上が被災するという極めて甚大な被害を受けました。

東京都選定歴史的建造物にも選ばれた旧江戸橋倉庫ビル

旧江戸橋倉庫ビルの模型。全体がまるで船のような設計。手前が日本橋川で、艀で運ばれてきた貨物をここで荷揚げした。
旧江戸橋倉庫ビルの模型。全体がまるで船のような設計。手前が日本橋川で、艀で運ばれてきた貨物をここで荷揚げした。

この後、三菱倉庫は、倉庫の近代化に着手します。震災の被害を受けた東京、横浜はもちろん大阪、神戸でも倉庫を鉄筋コンクリート造のものに建替え、震災から7年後の1930年には、日本橋に「江戸橋倉庫ビル」を竣工させました。江戸橋倉庫ビルは2011年まで使用され、またすぐ目の前に首都高速道路が走っているため、車から見たことがあるという方も多いのではと思います。

旧江戸橋倉庫ビルは特徴的な外観を持ち、その姿はまるで「船」。屋上には船の船橋(せんきょう、ブリッジ)を模した塔屋が建ち、角に設置されたエントランス部は丸みを帯びた自然石が美しく、また一部の窓には半円形のバルコニーも添えられた優美なビルでした。こうした点から2007年には東京都選定歴史的建造物に、2008年には近代化産業遺産にも選定されたビルでした。

デザイン性だけでなく、戦後しばらくは川側の屋上に艀から荷を揚げるためのクレーンが残っていたとのことです。今の日本橋からは想像ができませんが、ここが水運の町だったことを感じますね。

一般公開されている日本橋川河畔のテラス。写真正面が江戸橋、右側が首都高速道路。昭和モダンと現代のパワーが感じられる場所。
一般公開されている日本橋川河畔のテラス。写真正面が江戸橋、右側が首都高速道路。昭和モダンと現代のパワーが感じられる場所。

2014年に竣工した日本橋ダイヤビルは、旧江戸橋倉庫ビルの歴史ある外観は保存しながら高層部を調和させた、新しい日本橋のランドマークとなりました。地上18階地下1階のフロアのうち2階から6階が三菱倉庫の本店事務所とトランクルームとして利用されています。なおこの「トランクルーム」という言葉、実は三菱倉庫が作ったものってご存知でしたか? 戦後は特に消費者向けのトランクルームの需要が増え、江戸橋倉庫ビルの倉庫区画はすべてトランクルームに。こちらでは歌舞伎役者の方の荷物を預かったりもしていたそうです。さすが日本橋という感じですね!

江戸橋歴史展示ギャラリーでは、そんな歴史と情緒のまち日本橋の発展と倉庫業の変遷、そして三菱倉庫の成長をパネルや写真、映像を通じてその歴史を見ることができます。また、かつて艀からの荷揚げが行われていた日本橋川の河畔はテラスとして一般公開されており、ギャラリーで明治期の写真を見てからここへ来て、時代と風景の変化に思いをはせるのもおすすめです。日本橋と三菱倉庫の今と昔を見に、江戸橋歴史展示ギャラリーを訪れてみましょう。


注:本文中の情報等はいずれも2019年9月現在のものです。

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