みにきて! みつびし

みにきて! みつびし

細部までこだわる復元に込められた情熱

三菱一号館

訪問記を読む

こんにちは! 事務局のカラットです。三菱グループの企業に勤めていても、その長い歴史やゆかりの建造物などについて触れる機会は意外と無いものです。そこで、三菱ゆかりの地を三菱グループ関係者の皆さんにご紹介すべく、三菱広報委員会が会員会社の広報部員向けに開催されている、三菱ゆかりの地を訪問する研修会に同行させていただきました。今回は第一弾、東京・丸ノ内の「三菱一号館」をご案内します。

東京都千代田区丸の内。皇居と東京駅に挟まれたこの地区に、2009年4月、34階建て高層ビル「丸の内パークビルディング」が完成しました。そしてその隣に誕生した3階建ての赤煉瓦造りの建物、それが『三菱一号館』です。

アンケートでは「三菱一号館を名前も場所も知っている」と回答された方が48.1%と半数近くに上りましたが、「なぜ三菱一号館と呼ぶかご存知ですか?」という質問では74.5%の方が「知らない」と回答。そこでまずは、三菱一号館の歴史から見ていきましょう。

復元された三菱一号館の窓から、最新鋭の高層ビル・丸の内パークビルディングを見上げる。
復元された三菱一号館の窓から、最新鋭の高層ビル・丸の内パークビルディングを見上げる。

2009年に完成した三菱一号館は、実はかつてこの場所にあった同名の建物をできる限り忠実に復元したもの。オリジナルの三菱一号館が建てられたのは1894(明治27)年にさかのぼります。1890(明治23)年、三菱二代社長・岩崎彌之助が、払い下げ先を求めていた政府から丸の内地区を買い取りました。そこへ三代社長・久彌が建てた最初のオフィスビルが、三菱一号館です。一号館の「一号」は、第一号のビル、ということだったんですね。設計は鹿鳴館やニコライ堂などを手掛けたジョサイア・コンドルによるものです。

この一号館を皮切りに煉瓦造りのオフィスビルが続々と建設されて丸の内地区は「一丁倫敦」と呼ばれる街並みとなりました。しかし戦後の高度成長期の近代ビル化で徐々に煉瓦造りは姿を消し、1968(昭和43)年には旧三菱一号館も解体されました。そして約50年の時を経て、丸の内再開発プロジェクトの一環として再びその姿を現したのが、現在の三菱一号館というわけです。

細部までこだわる復元に込められた情熱

当時の銀行営業室を再現した模型。右上には「おかめの面」も(面の実際の設置場所は不明のため想像によるもの)。
当時の銀行営業室を再現した模型。右上には「おかめの面」も(面の実際の設置場所は不明のため想像によるもの)。

研修会では、まずはそんな一号館の歴史を説明いただいたあと、付設の歴史資料室へ。ここでは、旧一号館・現一号館建設の経緯や丸の内開発の歴史を映像やパネルで見たり、また、旧一号館時代の銀行営業室を再現した模型などの展示を見ることができます。この模型、覗き込むと三菱初代社長の岩崎彌太郎が商売人の心得として掲げたという「おかめの面」も飾られている細かさ! カウンター内で働く人や、訪れたお客さんの様子など、当時の様子がありありと想像できて楽しいものでした。ここへ来たら「おかめの面」チェックを忘れずに!

そして見学ツアーは一号館の深部へと進みます。そこで解説いただいたのが一号館の外観を彩る赤煉瓦について。解体された旧一号館の煉瓦はほとんどが消失してしまいましたが、現存していた数少ない現物を見ると、そこには桜の意匠が。「そこから製造元を調査したところ、都内の刑務所で作られたものであることがわかりました」とのご説明にびっくり! しかしこの煉瓦が作られた製法は国内ではすでにおこなわれていないこともわかり、そこで近い製法を採用している中国の工場で一つ一つ製造されたそうです。その数実に230万個! 煉瓦の組み方についても、資料からはくみ取れない細かな点を調べるため、コンドルの弟子である片山東熊が設計した京都国立博物館へ出向いて参考にしたりしたそうです。その徹底ぶり、復元への情熱に強い感銘を受けました。

中央階段の手すりにも、旧一号館当時から保管されていた部材も再利用されている。
中央階段の手すりにも、旧一号館当時から保管されていた部材も再利用されている。

こうして当初の設計図や実測図、写真などをもとに、可能な限り忠実におこなわれた三菱一号館の復元は、2009年の竣工から1年間の「枯らし期間」を経て、2010年・春に「三菱一号館美術館」としてオープンしました。一号館が建てられた19世紀を中心とする近代美術に焦点をあて、また、オフィス街である丸の内は女性が多く活躍する場であることから、「働く女性」もテーマの一つにした、さまざまな展覧会がおこなわれています。一号館は外観だけでなく、間取りから階段の手すりに至るまで、内装も当時の部材が一部再利用されています。展示品だけでなく、そうした館内の装飾や空間を楽しめるのも一号館美術館の魅力ですね。

三菱一号館の中庭。ビル街の中で一年中緑を感じられる憩いの場所。
三菱一号館の中庭。ビル街の中で一年中緑を感じられる憩いの場所。

また、一号館と丸の内パークビルディングの間には、緑豊かな中庭も整備されており、談笑したりお弁当を食べたり、憩いの場として一日中多くの人々が訪れています。多忙なビジネスパーソンの集まるオフィス街丸の内のオアシスです。

館内ツアーの最終地点は併設のミュージアムカフェ・バー「Café1894」。フロアのなかほどにカウンターがあったり店内を見下ろすような2階回廊があったり、カフェとしては少し変わった雰囲気ですが、どこかで見たような…と思うと、なんと最初の歴史資料室で見た旧一号館の銀行営業室そのまま! 窓口のカウンターや柱頭飾など、こちらも当時の部材を参考に、できる限り忠実に復元。旧一号館時代の雰囲気の中で、美味しい食事やお酒を楽しむことができます。美術展に訪れたあとは、ここで一休みして余韻を味わうのはいかがでしょうか。

次回は国の重要文化財でもある、旧明治生命本社ビル『明治生命館』を訪問します!


注:本文中の情報等はいずれも2016年6月現在のものです。

タグを選択すると同じカテゴリの他の施設が探せます。